2025年05月14日
R7.5.14 2025年版中小企業白書の主なポイント
こんにちは、北野純一税理士事務所の北野です。
今回は、先日公表された「中小企業白書」についてのお話です。

2025年版『中小企業白書』および『小規模企業白書』は、2025年4月25日に閣議決定され、経済産業省中小企業庁より公表されました。これらの白書は、2024年度(令和6年度)の中小企業・小規模事業者の動向と、2025年度(令和7年度)に講じられる施策を取りまとめたものです。
特に、経営者の「経営力」に焦点を当て、変化する経済環境における中小企業の持続的成長と発展のための戦略が示されています 。
1.経済環境の変化が中小企業を直撃
2024年度の経済動向では、エネルギー・資材価格の高騰や円安継続により、中小企業は原価上昇・利益圧迫に直面しました。
また、長期化する人手不足と物流費増も経営を圧迫し、資金繰りの厳しさが顕著になっています。
白書は、こうした状況下における持続可能な経営のために、資源配分の見直しや価格転嫁、資金調達力強化を提案しています。柔軟かつ戦略的な経営判断がこれまで以上に求められています。
■現状分析~倒産件数は増加傾向。人件費や物価をはじめとしたコスト高騰が原因の倒産が増加
①2010年代以降、倒産件数は減少傾向にあったが、コロナ禍以降再び増加に転じ、2024年の倒産件数は10,006件。なお、倒産件数は2022年に増加に転じた一方で、完全失業率は足下でも横ばい傾向が続いている。
②要因別に見ると、人手不足によるものや、人件費・物価の高騰を要因とした倒産の件数も増加している。

2.経営者の「経営力」が企業成長の鍵
2025年版白書では「経営力」の向上を中小企業の持続的発展の原動力としています。
■重要な取組~変化の中で成長・発展を実現するには、これまで以上に経営者の「経営力」が問われる
①こうした状況を踏まえれば、従来のやり方では現状維持も困難であり、経営者はこれまで以上に「経営力」が問われる。自社内外の状況を正確に見極め、適切な行動を起こしていくことが重要。
中小企業が足下で最も重要と考える経営課題は「人材確保」だが、特に中規模企業では「省力化・生産性向上」、小規模事業者では「受注・販売の拡大」、「事業承継」が比較的高い傾向にあり、これらの課題にしっかりと取り組んでいくことが重要。
②外部環境が激変する中、足下の課題への対応に加え、長期的な視野で投資や人材確保に向けた戦略を検討し、不断に見直していくことは重要。実際、長期を見据えた経営計画を策定・実行している企業ほど、付加価値額が大きく増加している傾向。

具体的には、以下の3軸が示されています。これらを実践している企業は、利益率や付加価値の向上が見られるという調査結果もあり、今後の差別化戦略として不可欠な要素とされています。
【経営力の3つの要素】
①個人特性面(経営者自身の成長)
経営者が他業種の経営者と交流し、知見を広げることで新しい発想や知識が得られます。さらに、学び直し(リスキリング)に積極的な姿勢は、業績向上への意欲として評価され、企業全体の前向きな変革につながります。
②戦略策定面(経営の方向づけ)
経営計画の策定と実行を通じ、適切な価格設定や差別化戦略を講じることが重要です。市場環境を的確に捉えた経営は、利益の安定確保や賃上げ、さらには将来の投資促進にもつながるとされています。
③組織人材面(従業員と共に成長)
経営理念や業績の情報を社員と共有する「オープン経営」は、従業員のやる気や信頼を高めます。また、社内コミュニケーションの活性化、働き方改革、職場環境の改善に取り組む人材経営は、人材の定着率向上にも効果を発揮します。
3.中小企業の重点戦略:5大分野の実行力が重要
白書が提案する重点戦略は、以下の5分野に分類され、それぞれに明確な実行意義があります。
【中小企業の重点戦略:5つの実行課題】
①デジタル化の推進
業務の効率化や売上拡大、新規顧客開拓の手段としてDX(デジタルトランスフォーメーション)は不可欠です。業務システム導入や電子商取引の展開は、多くの中小企業にとって生産性向上と新市場開拓の鍵となります。
②適正な価格設定と価格転嫁
原材料費や人件費の上昇を適正に価格へ反映できる体制づくりは、持続的な利益確保の基本です。価格交渉力の強化や市場に応じた価格戦略の見直しが不可欠です。
③設備投資による生産性向上
老朽化設備の更新や省人化・省力化設備の導入は、限られた人材資源でも安定した生産体制を維持するために重要です。特に製造業や建設業での効果が顕著です。
④人材の確保と育成
採用競争の激化を受けて、働きやすい環境整備やキャリア形成支援が求められています。リスキリングを含む教育訓練制度の導入も喫緊の課題です。
⑤脱炭素・ESG・人権対応
企業の社会的責任を果たし、取引先や消費者の信頼を得るには、環境・人権・ガバナンスの観点での対応が求められます。中長期的には競争優位の要因となり得ます。
4.白書の実践的活用法:計画・助成金・人材戦略に
中小企業白書は単なる報告書ではなく、現場での経営戦略立案・実行のための「ヒント集」として活用できます。たとえば、経営計画策定時の環境分析、補助金申請書の根拠資料、幹部育成方針の整理などに応用が可能です。
特に補助金の要件である「経営課題の認識と対応策の明示」において、白書に基づく記述は説得力を増します。自社の取り組みを白書に照らして客観的に見直すことで、経営の質的転換にもつながります。
参考資料:2025年版中小企業白書・小規模企業白書の概要
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今回は、先日公表された「中小企業白書」についてのお話です。

2025年版『中小企業白書』および『小規模企業白書』は、2025年4月25日に閣議決定され、経済産業省中小企業庁より公表されました。これらの白書は、2024年度(令和6年度)の中小企業・小規模事業者の動向と、2025年度(令和7年度)に講じられる施策を取りまとめたものです。
特に、経営者の「経営力」に焦点を当て、変化する経済環境における中小企業の持続的成長と発展のための戦略が示されています 。
1.経済環境の変化が中小企業を直撃
2024年度の経済動向では、エネルギー・資材価格の高騰や円安継続により、中小企業は原価上昇・利益圧迫に直面しました。
また、長期化する人手不足と物流費増も経営を圧迫し、資金繰りの厳しさが顕著になっています。
白書は、こうした状況下における持続可能な経営のために、資源配分の見直しや価格転嫁、資金調達力強化を提案しています。柔軟かつ戦略的な経営判断がこれまで以上に求められています。
■現状分析~倒産件数は増加傾向。人件費や物価をはじめとしたコスト高騰が原因の倒産が増加
①2010年代以降、倒産件数は減少傾向にあったが、コロナ禍以降再び増加に転じ、2024年の倒産件数は10,006件。なお、倒産件数は2022年に増加に転じた一方で、完全失業率は足下でも横ばい傾向が続いている。
②要因別に見ると、人手不足によるものや、人件費・物価の高騰を要因とした倒産の件数も増加している。

2.経営者の「経営力」が企業成長の鍵
2025年版白書では「経営力」の向上を中小企業の持続的発展の原動力としています。
■重要な取組~変化の中で成長・発展を実現するには、これまで以上に経営者の「経営力」が問われる
①こうした状況を踏まえれば、従来のやり方では現状維持も困難であり、経営者はこれまで以上に「経営力」が問われる。自社内外の状況を正確に見極め、適切な行動を起こしていくことが重要。
中小企業が足下で最も重要と考える経営課題は「人材確保」だが、特に中規模企業では「省力化・生産性向上」、小規模事業者では「受注・販売の拡大」、「事業承継」が比較的高い傾向にあり、これらの課題にしっかりと取り組んでいくことが重要。
②外部環境が激変する中、足下の課題への対応に加え、長期的な視野で投資や人材確保に向けた戦略を検討し、不断に見直していくことは重要。実際、長期を見据えた経営計画を策定・実行している企業ほど、付加価値額が大きく増加している傾向。

具体的には、以下の3軸が示されています。これらを実践している企業は、利益率や付加価値の向上が見られるという調査結果もあり、今後の差別化戦略として不可欠な要素とされています。
【経営力の3つの要素】
①個人特性面(経営者自身の成長)
経営者が他業種の経営者と交流し、知見を広げることで新しい発想や知識が得られます。さらに、学び直し(リスキリング)に積極的な姿勢は、業績向上への意欲として評価され、企業全体の前向きな変革につながります。
②戦略策定面(経営の方向づけ)
経営計画の策定と実行を通じ、適切な価格設定や差別化戦略を講じることが重要です。市場環境を的確に捉えた経営は、利益の安定確保や賃上げ、さらには将来の投資促進にもつながるとされています。
③組織人材面(従業員と共に成長)
経営理念や業績の情報を社員と共有する「オープン経営」は、従業員のやる気や信頼を高めます。また、社内コミュニケーションの活性化、働き方改革、職場環境の改善に取り組む人材経営は、人材の定着率向上にも効果を発揮します。
3.中小企業の重点戦略:5大分野の実行力が重要
白書が提案する重点戦略は、以下の5分野に分類され、それぞれに明確な実行意義があります。
【中小企業の重点戦略:5つの実行課題】
①デジタル化の推進
業務の効率化や売上拡大、新規顧客開拓の手段としてDX(デジタルトランスフォーメーション)は不可欠です。業務システム導入や電子商取引の展開は、多くの中小企業にとって生産性向上と新市場開拓の鍵となります。
②適正な価格設定と価格転嫁
原材料費や人件費の上昇を適正に価格へ反映できる体制づくりは、持続的な利益確保の基本です。価格交渉力の強化や市場に応じた価格戦略の見直しが不可欠です。
③設備投資による生産性向上
老朽化設備の更新や省人化・省力化設備の導入は、限られた人材資源でも安定した生産体制を維持するために重要です。特に製造業や建設業での効果が顕著です。
④人材の確保と育成
採用競争の激化を受けて、働きやすい環境整備やキャリア形成支援が求められています。リスキリングを含む教育訓練制度の導入も喫緊の課題です。
⑤脱炭素・ESG・人権対応
企業の社会的責任を果たし、取引先や消費者の信頼を得るには、環境・人権・ガバナンスの観点での対応が求められます。中長期的には競争優位の要因となり得ます。
4.白書の実践的活用法:計画・助成金・人材戦略に
中小企業白書は単なる報告書ではなく、現場での経営戦略立案・実行のための「ヒント集」として活用できます。たとえば、経営計画策定時の環境分析、補助金申請書の根拠資料、幹部育成方針の整理などに応用が可能です。
特に補助金の要件である「経営課題の認識と対応策の明示」において、白書に基づく記述は説得力を増します。自社の取り組みを白書に照らして客観的に見直すことで、経営の質的転換にもつながります。
参考資料:2025年版中小企業白書・小規模企業白書の概要
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Posted by 北野純一税理士事務所 at 12:40│Comments(0)
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