2023年12月26日

ふるさと納税 利用者過去最高に

北野税理士事務所の北野です。

ふるさと納税


いよいよ年の瀬が迫りました。この時期、駆け込みでふるさと納税をした人も多いはず。総務省によれば、2022年度のふるさと納税寄附額は約9,654億円、納税寄附件数は約5,184万件、利用者数も約891万人と過去最高を更新しています。今回は、ふるさと納税に焦点をあてます。



自治体に寄付をして減税を受ける

ふるさと納税は2008年から始まった制度です。居住地ではない自治体に一定額を寄付すると、その年の所得税と翌年の住民税の減税が受けられ、さらにその自治体から返礼品をもらうことができます。

つまり、「減税が受けられる寄付金」です。以前は確定申告が必要でしたが、2015年から「ワンストップ特例制度」が始まり、サラリーマンは寄付先の自治体に所定の申請書を出せば手続きが完了し、使い勝手がよくなりました。ワンストップを利用した場合、所得税の減税分も加えた金額が、住民税から減税されます。



2,000円の負担で、それ以上の返礼品

人気が出た一番の理由は、寄付金が一定額までならば、「実負担額2,000円(=寄付金マイナス減税額)で、それ以上の価値の返礼品がもらえる」ことでしょう。

ただし、そもそもは「今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた『ふるさと』に、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのではないか」という問題提起から始まった制度です。総務省は、ふるさと納税には「三つの大きな意義」があるとして、以下のように説明しています。



①納税者が寄附先を選択する制度であり、選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなる制度である。

②生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度である。

③自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進む。



いかがでしょうか。納税者の意図と政府が掲げる意義の間には、なかなかの隔たりがあることがわかります。



ふるさと納税の困った点

さて、人気のふるさと納税ですが、良いことづくめというわけではありません。過度な返礼品競争が問題になり、総務省が手綱を引き締めたのはご存じの通りです。特産品のある自治体にはたくさんのふるさと納税が集まる一方、そうでない自治体には集まらないばかりか税収が減ってしまうという問題点があります。

ここで、ワンストップ納税を利用したサラリーマンAさんに登場してもらいます。Aさんの住んでいる自治体はX、ふるさと納税をした自治体はYです。Xにはこれといった特産品がありません。Aさんは、ちょうど2,000円の負担で済むよう計算し、Yに50,000円のふるさと納税をしました。

総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和5年度)」、読売新聞「ふるさと納税…結局誰が得をして、誰が損をしているのか」(2022.2.18)を参考に、50,000円がどう配分されるかを考えてみます。



Aさん…Xから48,000円の住民税減税を受け、実負担は2,000円。

自治体X…48,000円の税収減。

自治体Y…50,000円の寄付を受ける。返礼品の販売業者に13,900円(27.8%)、それ以外に諸費用(送付・広報・決済・事務)として9,500円(19.0%)を支出。実収益は26,600円(53.2%)。



(注)カッコ内のパーセンテージは、総務省の資料「ふるさと納税の募集に要した費用(全団体合計額)」による。ふるさと納税サイトへの支払いは諸費用に含まれる。



矛盾を抱える制度

自治体Xが大都市で、もともと財政が豊かならばまだしも、規模の小さな自治体で特産品がない場合は、X自身が受ける寄付金はそれほど多くありません。ふるさと納税を利用する住民が増えるほど税収減となり、結果として住民サービスの低下につながりかねません。単純計算で人口比7.4%の利用率なので、それなりの税収減となることもあり得ます。総務省の意義③に「自治体間の競争」とありますが、土台となる条件が自治体ごとに違っており、そもそも競争として成り立たないのではないでしょうか。良かれと思ってすることが、実は自分の首を絞めることにつながるのでは困ります。

一方で自治体Yにとっては寄付された金額の半分近くに減るとはいえ、財政難を支える確かな収入源となっており、非常に助かっているという声が出されています。ふるさと納税は、引き続き矛盾を抱えた制度であり、そもそもの趣旨や自治体財政への影響の検証も含め、さらなる制度変更が必要ではないでしょうか。



参考:総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和5年度)


 北野純一税理士事務所のホームページ もぜひご覧ください 

 Facebook でも情報発信しています! お友達登録お願いします! 

 北野純一税理士事務所  LINEお友達登録 もぜひお願いします! 






  
  • LINEで送る

Posted by 北野純一税理士事務所 at 13:39Comments(0)寄付金

2023年12月11日

2024年1月1日から相続税・贈与税が変わる

北野税理士事務所の北野です。

相続税法及び租税特別措置法の令和5年度改正により、来年1月1日から、暦年課税や相続時精算課税の制度が変わります。
重要ポイントについて、最終確認をしておきましょう。

来年1月1日から相続税・贈与税が変わる


1.暦年課税…生前贈与加算の対象期間が7年に

「暦年課税」とは、1月1日から12月31日までの一年間に贈与された財産の合計額に応じて10~55%の税率で贈与税が課税される計算方法のことです。
年110万円の基礎控除があるため、それ以下の贈与額であれば贈与税はかからず、税務署への申告も不要です。
「生前贈与加算」とは、被相続人(亡くなった人)から生前に贈与を受けた財産がある場合、その財産を死亡時の財産に加算し、相続税の課税対象にする制度です。基礎控除額以下で贈与税がかからなかった財産も加算の対象です。

改正前は死亡前3年間の贈与財産が対象でしたが、改正によりその期間が7年間に延長されました。とはいえ、いきなり7年になるわけではありません。2024年1月1日以後の贈与について、下記のように加算対象期間が長くなっていき、最終的に7年になります。

1

なお、死亡前3年間の贈与財産については全額を加算しますが、今回延長された4~7年分については、その間の贈与財産の合計額から100万円を差し引いた残額を加算します。


2.相続時精算課税

「相続時精算課税制度」とは、一定の要件に該当する贈与者と受贈者間で財産の贈与を行った場合に選択できる贈与税の計算方法のことです。
この制度を選択すると、贈与財産の累計が2500万円(特別控除)までは贈与税がかかりません。
累計が2500万円を超えると、超えた部分に対して一律20%の贈与税がかかります。
その後相続が発生したときは、それまでの相続時精算課税の贈与財産と死亡時の相続財産を合算し、相続税の計算を行います。すでに支払った贈与税がある場合には、その贈与税を差し引いて残りの相続税を納めます。
なお、ある贈与者について一度相続時精算課税を選択すると、その贈与者からの贈与については暦年課税に戻すことはできません。
相続時精算課税は、贈与時の税負担を抑えることができますが、相続時には贈与財産も相続税の対象になるため、「課税の繰り延べ」であるといえます。

3.年110万円の基礎控除の創設

今回の改正により、相続時精算課税を選択した受贈者は、特定贈与者(相続時精算課税の対象である贈与者)ごとに、一年間に贈与された財産の合計額から基礎控除110万円を差し引くことができるようになりました。
相続時精算課税の対象になるのは110万円を差し引いた残りの金額です。以下のような点が変わってきます。

●贈与税

①年110万円以下の贈与なら、贈与税の申告は不要 相続時精算課税を選択すると、改正前はたとえ1万円を贈与した場合でも申告が必要でした。しかし改正後は、110万円以下の贈与なら基礎控除を差し引いて0円になるため、贈与税が課税されず、申告も不要になります。

②贈与税がかからないかたちで、2500万円以上の財産が贈与できる
例えば、特定贈与者からある年に500万円の贈与を受けた場合、改正前は500万円全額が相続時精算課税の対象になりました。改正後は、基礎控除110万円を差し引いた390万円が相続時精算課税の対象になります。その翌年200万円の贈与を受けたとしたら、基礎控除110万円を差し引いた90万円が相続時精算課税の対象になります。
20%課税の基準となる「2500万円」は、年110万円の基礎控除を差し引いた残額の累計で計算するため、実質的に2500万円以上の財産が無税で贈与できるようになります。

●相続税

相続財産に加算する相続時精算課税の贈与財産は、年110万円の基礎控除を差し引いた残額の累計になります。贈与財産が110万円以下だった年については、加算する財産がないことになります。

このようにみてくると、相続時精算課税についてはメリットを増やし、納税者にとって使い勝手がよくなる方向での改正となっています。令和5年度改正により、今後この制度を選択する人が増えていくことが予想されます。

国税庁「令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」



 北野純一税理士事務所のホームページ もぜひご覧ください 

 Facebook でも情報発信しています! お友達登録お願いします! 

 北野純一税理士事務所  LINEお友達登録 もぜひお願いします! 






  
  • LINEで送る

Posted by 北野純一税理士事務所 at 14:27Comments(0)相続