2022年08月25日

休業するための手続きと税金

北野純一税理士事務所の南田です。

8月になって新型コロナの感染者数が爆発的に増えており、減少の兆しは感じられない状況が続いています。社会全体として経済活動を継続していくという方向性ではありますが、業種によっては営業をストップしたいケースもあるかもしれませんね。コロナ禍とは関係なく、社会状況の変化によって事業継続が難しいケースや、個人的な理由で事業を一時的にストップしたいケースもあります。
今回は、事業をストップしたい場合の選択肢の一つである休業について、休業中の税金や手続きについてまとめました。

休業前の手続き
休業するためには、税務署、都道府県、市区町村に休業するための書類を提出します。税務署に提出する書類としての休業届はなく、「異動届」に休業した旨を記載します。地方自治体では、自治体によって書類の名称が異なる場合があり休業届がない場合には、税務署と同じく異動届に休業した旨を記載します。
他に、社会保険の手続きも必要となります。社会保険の被保険者がいなくなった場合は、休業してから5日以内に年金事務所に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を提出します。

休業中の税金
休眠会社にも法人税、法人住民税、固定資産税の納税義務があります。
法人税、法人住民税については、基本的には営業活動を行っていないため収益が発生しないことから課税所得が発生せず、これに伴う税金は発生しません。しかし、法人住民税の均等割は所得にかかわらず発生するため、納付する必要があります。地方自治体によっては、均等割が免除される場合がありますので、確認をするとよいでしょう。固定資産税については、所得ではなく固定資産に対して課税されるため、納税する必要があります。
また、会社所有の固定資産を売却したり、借入金を免除してもらったりした場合、税金が発生する可能性もあります。営業活動をしていなくても会社として何らかの経済活動を行った場合には、注意が必要です。

休業中の手続き
休業中であっても、申告をしなければ青色申告が取り消されてしまいます。したがって、休業中でも申告手続きを行う必要があります。休業中は収益が発生しませんので、欠損金が発生し繰越控除が可能となります。事業再開時に繰越欠損金があれば、黒字が出た場合に相殺することができますので、青色申告をしっかりと行うことは事業再開時のメリットになります。
他にも、会社の登記上は、営業活動をおこなっているか休眠会社であるかは関係がないため、休業していたとしても役員変更時や任期満了時には役員変更の登記をする必要があります。
事業を再開するには、税務署などに再開の旨を記載した異動届を提出し、社会保険の再加入手続きを行います。

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Posted by 北野純一税理士事務所 at 13:51Comments(0)経営

2022年08月23日

新収益計上基準とは?中小企業への影響は?


新型コロナの感染者数が爆発的に増えているコロナ禍の中、令和4年度の税理士試験が開催されました。陽性判定が出たり濃厚接触者になったりすると試験を受けることができませんので、受験者は感染予防と受験対策で大変だったと思います。受験者も、応援や協力をされた周囲の方も、お疲れ様でした。
税理士試験には数多くの科目がありますが、受験者の多い簿記論や財務諸表論について、難しかったとの感想が多く聞かれました。今回は、税理士試験の出題に関連した項目で、新収益認識基準についてまとめました。税法は毎年改正されますが、会計についての考え方もどんどん新しくなっていきます。ぜひ皆様も参考にしてください。

新収益認識基準とは?
収益認識基準とは、簡単に言うと売上を計上するタイミングをどの時点にするか、の基準です。従来は、企業会計原則では収益認識基準は実現主義が原則とされてきました。実現主義とは、販売したものに対して、現金などの貨幣的裏付けのある対価を確実に受け取ったという事実に基づいて、収益を計上するものです。収益の実現時点は業種や企業によって異なり、納品基準、検収基準などで収益が認識されてきました。
しかし、国際会計基準では、収益は、企業が商品・製品・サービスを顧客に提供する義務(履行義務)を果たし、商品などを支配する権利が顧客に移転したときに計上することになっています。確かに、業種や企業ごとに異なる実現主義では、経営成績などを企業比較するのが難しくなります。日本でも、財務諸表の国際比較を可能にして企業の国際競争力を確保するために、積極的に国際会計基準に合わせていこうとする動きがあり、2021年4月から「新収益認識基準」の適用が開始されました。この適用は、大企業で強制適用となっています。

中小企業への影響
新収益認識基準は上場企業などでは強制適用ですが、非上場の中小企業では任意適用となっています。新収益認識基準を正確に適用するには高い会計知識が必要となり、多くの中小企業ではその適用が困難です。親会社が上場しているなどの事情がなければ、中小企業では、従来の実現主義や法人税の権利確定主義の考え方にあわせた処理も可能となっています。
建設業では、従来、工事進行基準や工事完成基準で収益の認識がされてきましたが、収益認識基準が創設されたことに伴い、工事会計基準が廃止されました。しかし、法人税法では工事進行基準や工事完成基準の規定は引き続き存在しており、中小企業への影響は少ないと考えられます。

新収益認識基準のポイント
新収益認識基準の収益認識は、企業が顧客に対する商品・製品・サービスの履行義務を果たし、商品などの支配が顧客に移転したときに計上するのは上記で説明したとおりですが、具体的には次の5つのステップが必要です。
新収益認識基準は、見積もりや判断が求められるため中小企業での適用が難しい言われていますが、表現が難解であることもその要因ではないでしょうか。各ステップで簡単な説明を補足しますので、参考にしてください。

1.契約の識別
売上を行い計上するには、顧客との契約が基本となります。書面、口頭、取引慣行、一体となった複数の契約は含まれますが、対価のないような寄付や贈与は含まれません。

2.履行義務の識別
製品・サービスの提供など、企業が顧客に対してすべきことを指します。

3.取引価格の算定
基本的には契約金額となりますが、値引きやリベートがある場合にはこれを調整した金額となります。

4.取引価格の履行義務への配分
例えば、商品代金と保守サービスが一体となっている場合には、取引価格を商品の引き渡しと保守サービス提供に分けます。

5. 履行義務の充足に応じて収益を認識
例えば、商品を引き渡した時点では、「4.取引価格の履行義務への配分」で分けた取引価格のうち商品分の売上しか計上できません。保守サービス分は、期間配分などの方法で収益計上を行うことになります。


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Posted by 北野純一税理士事務所 at 15:41Comments(0)会計・経理

2022年08月16日

ファクタリングとは?会計処理と債権譲渡の仕組み

北野純一税理士事務所の南田です!

ファクタリングとは、売掛金をファクタリング会社に売却することで資金調達する方法で、取引は債権譲渡という形になります。
民法の改正で、債権譲渡制限の特約がついた債権を譲渡することができるようになり、ファクタリングが利用しやすくなりました。中小企業にとっては資金調達しやすくなりましたので、会社によってはファクタリングの会計処理を行うことが増えるかもしれません。
今回は、ファクタリングの会計処理と、その基礎知識である債権譲渡などについてまとめました。

ファクタリングを行った場合の会計処理
まず、実際に売掛金をファクタリング会社に譲渡して資金調達をした場合の会計処理を確認します。
ファクタリング契約時には、「売掛金」を「未収入金」に振り替えます。入金があった時点で「未収入金」から「現金預金」に振り替えます。ファクタリング会社に支払う手数料が債権金額と入金額の差額になりますが、これは「売掛債権売却損」として処理します。損益計算書上の区分は、営業外費用となります。
ファクタリングが一般的な取引でなく「売掛債権売却損」の勘定科目を設定しない場合は、「支払手数料」などの科目としても問題ありません。

債権譲渡と譲渡制限特約の仕組み
ファクタリングの会計処理自体は難しいものではありませんが、会計処理を行うには取引の仕組みや、その基礎となる知識を知っておく必要があります。
債権譲渡を行うと、債権者が持っている権利が譲受人に移ります。譲受人が債務者から債権を回収するためには、債権を主張するための対抗要件を満たさなければなりません。これには債務者への通知などいくつかの方法があり、比較的容易に対抗要件を満たすことができます。対抗要件が必要とされているのは、債務者が誰に返済すればよいのか知るためや、二重譲渡を防止するためです。
しかし、債務者にとって、いつもの取引先から請求されるのと、知らない人から請求されるのとでは大きな違いがあります。そこで、今までは、売掛金には、債権譲渡制限の特約を付けることが一般的でした。これは、他の人へ債権を譲渡しないことなどの制限を約束した契約です。民法改正前は、この特約が付いた債権を譲り受けたとしても無効でした。

債権譲渡制限特約についての民法改正
民法改正により、譲渡制限特約が付いた債権であっても、譲渡の効力は妨げられないとされました。つまり、譲渡制限特約が付いた債権でも、譲渡することが可能となったのです。
しかし、支払い先を固定したいという債務者も保護する必要があることから、譲渡制限特約が付いていることを知っているか、少しの注意で知ることができる状況である(悪意重過失)譲受人に対しては、債務者は債務の履行を拒むことができ、譲渡人、つまり元の債権者に対して返済すれば免責されることになりました。
譲渡制限特約が付いた債権について、第三者から、「この債権を譲り受けたので、自分に返済してほしい」と言われら、まず、実際に債権譲渡がされたかを確認することが大切です。そして、「債権譲渡を認めてこの第三者に返済する」「債権の譲受人が悪意重過失であることを主張して元の債権者に返済する」「供託する」の方法から選択することになります。

ファクタリング会社の利用
中小企業が売掛金を譲渡する際に、利用しやすいのがファクタリング会社です。ファクタリングには、2社間ファクタリングと、3社間ファクタリングがあります。2社間ファクタリングでは、利用者とファクタリング会社との間で取引が進められ、3社間ファクタリングでは、利用者・取引先・ファクタリング会社との間で取引が進められます。
民法改正がされたといっても、譲渡制限が付いた債権は、譲受人(ファクタリング会社)への支払いを拒否される場合もあるので、2社間ファクタリングの利用が一般的と考えられます。この場合には、返済が遅れた場合に譲受人から、元の債権者に返済するように催告することができるとされています。


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Posted by 北野純一税理士事務所 at 14:38Comments(0)経営