2025年03月12日
R7.3.12 サイバーセキュリティ調査と産業振興戦略の最新動向
皆様こんにちは。
北野純一税理士事務所の北野です。
今回はサイバーセキュリティ調査と産業振興戦略の最新動向についてお伝えいたします。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、「2024年度中小企業における情報セキュリティ対策の実態調査報告書」速報版を公開しました。調査では、サイバーセキュリティ対策の実施状況が依然として不十分であることや、特にサプライチェーンにおけるリスクが深刻である点が浮き彫りになりました。
また、経済産業省は、「サイバーセキュリティ産業振興戦略」を発表し、国内セキュリティ産業の基盤強化を目指しています。本戦略では、スタートアップ企業の製品活用を推進し、研究開発支援や人材育成プログラムの拡充が計画されています。
1.中小企業のサイバーセキュリティ対策の現状
近年、サプライチェーン上の弱点を狙うサイバー攻撃が顕在化・高度化しています。特に中小企業での情報セキュリティ対策が不十分な場合、自社だけでなく取引先にも甚大な影響を及ぼすケースが目立ちます。IPAの調査によると、サイバー攻撃の被害により取引先に影響を与えた企業は約7割にのぼり、サービスの停止や個人情報の流出といった深刻な事態が発生しています。
また、過去3期内の被害額平均は73万円で、復旧までに要した期間は平均5.8日と報告され、費用面と時間面での負担も大きい状況です。このようなリスクを放置することは、サプライチェーン全体の事業継続性を脅かしかねません。
2.セキュリティ体制未整備の中小企業が大多数
中小企業の約7割が組織的なセキュリティ体制を整備しておらず、専任の部署や専門人材が不足している状況です。さらに、過去3期において情報セキュリティ対策に投資を行っていない企業も約6割に達しており、コストや必要性の認識不足が主な原因とされています。
一方で、経済産業省は中小企業のセキュリティ対策強化や国内産業基盤の拡大を目指しています。例えば、経済産業省とIPAが提供する「サイバーセキュリティお助け隊サービス」は、中小企業向けに不可欠な機能を備え、利用しやすい価格で提供されるサイバーセキュリティ対策支援です。基準を満たしたサービスがリスト化され、IT導入補助金の対象にもなっています。中小企業の多様なニーズに応じたサービスの拡充が進められており、導入を通じて日本全体のセキュリティ向上が期待されています。
■サイバーセキュリティお助け隊サービス

3.サイバーセキュリティ産業振興戦略の概要
経済産業省は、日本のサイバーセキュリティ産業基盤を強化する「サイバーセキュリティ産業振興戦略」を今年3月に取りまとめました。この戦略では、国内で活用されるセキュリティ製品の多くが海外製である現状を踏まえ、国内企業が安心して選べる製品・サービスの充実を目指します。また、スタートアップ企業の製品活用を推進し、活用実績を積み上げることで販路拡大を図る仕組みを整えています。
さらに、約300億円規模の研究開発プロジェクトや、高度専門人材の育成プログラム拡充などを通じて供給力を強化します。これにより、10年以内に国内企業の売上高を約0.9兆円から3兆円以上に拡大させることを目指しています。
■「サイバーセキュリティ産業振興戦略」の概要

4.国内企業への期待と今後の展望
本戦略の取り組みに対し、セキュリティ業界からも高い期待が寄せられています。例えば、スタートアップ製品の導入促進や研究開発支援を通じて、国内セキュリティ産業を活性化させることが期待されています。また、サイバー攻撃の特異性に対応した製品開発や情報蓄積の重要性も指摘されています。
経済産業省は今後も業界の関係者と連携し、具体的な施策を通じて国内企業の競争力強化を後押ししていく方針です。これにより、日本全体の安全保障やデジタル赤字解消にもつながると考えられています。
■活用可能な経済産業省等の支援策
【スタートアップ関連施策全般】
●潜在力のある企業への集中投資(例:J-Startup)
●事業を支える資金供給拡大(例:ディープテック・スタートアップ支援事業等)
●海外市場への事業展開・ネットワーク構築(例: J-Startup、J-StarX)
【公共調達等を通じた事業拡大】
●「デジタルマーケットプレイス」の活用
●「防衛産業へのスタートアップ活用に向けた合同推進会」の活用※推進会開催にあたり、随時業界団体とも連携
●「大企業等のスタートアップ連携・調達加速化事業」の活用 ※今後、随時公募を実施
【国際標準に向けた対応】
●標準化活用支援制度(新市場創造型標準化制度)の活用
●国際ルール形成・市場創造型標準化推進事業費補助金の活用 ※今後、公募を実施
■今後のロードマップ

参考資料:「2024年度中小企業における情報セキュリティ対策の実態調査報告書」速報版(独立行政法人情報処理推進機構)
サイバーセキュリティお助け隊サービス(IPA)
サイバーセキュリティお助け隊サービス(厚生労働省)
サイバーセキュリティ産業振興戦略(経済産業省)
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独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、「2024年度中小企業における情報セキュリティ対策の実態調査報告書」速報版を公開しました。調査では、サイバーセキュリティ対策の実施状況が依然として不十分であることや、特にサプライチェーンにおけるリスクが深刻である点が浮き彫りになりました。
また、経済産業省は、「サイバーセキュリティ産業振興戦略」を発表し、国内セキュリティ産業の基盤強化を目指しています。本戦略では、スタートアップ企業の製品活用を推進し、研究開発支援や人材育成プログラムの拡充が計画されています。
1.中小企業のサイバーセキュリティ対策の現状
近年、サプライチェーン上の弱点を狙うサイバー攻撃が顕在化・高度化しています。特に中小企業での情報セキュリティ対策が不十分な場合、自社だけでなく取引先にも甚大な影響を及ぼすケースが目立ちます。IPAの調査によると、サイバー攻撃の被害により取引先に影響を与えた企業は約7割にのぼり、サービスの停止や個人情報の流出といった深刻な事態が発生しています。
また、過去3期内の被害額平均は73万円で、復旧までに要した期間は平均5.8日と報告され、費用面と時間面での負担も大きい状況です。このようなリスクを放置することは、サプライチェーン全体の事業継続性を脅かしかねません。
2.セキュリティ体制未整備の中小企業が大多数
中小企業の約7割が組織的なセキュリティ体制を整備しておらず、専任の部署や専門人材が不足している状況です。さらに、過去3期において情報セキュリティ対策に投資を行っていない企業も約6割に達しており、コストや必要性の認識不足が主な原因とされています。
一方で、経済産業省は中小企業のセキュリティ対策強化や国内産業基盤の拡大を目指しています。例えば、経済産業省とIPAが提供する「サイバーセキュリティお助け隊サービス」は、中小企業向けに不可欠な機能を備え、利用しやすい価格で提供されるサイバーセキュリティ対策支援です。基準を満たしたサービスがリスト化され、IT導入補助金の対象にもなっています。中小企業の多様なニーズに応じたサービスの拡充が進められており、導入を通じて日本全体のセキュリティ向上が期待されています。
■サイバーセキュリティお助け隊サービス

3.サイバーセキュリティ産業振興戦略の概要
経済産業省は、日本のサイバーセキュリティ産業基盤を強化する「サイバーセキュリティ産業振興戦略」を今年3月に取りまとめました。この戦略では、国内で活用されるセキュリティ製品の多くが海外製である現状を踏まえ、国内企業が安心して選べる製品・サービスの充実を目指します。また、スタートアップ企業の製品活用を推進し、活用実績を積み上げることで販路拡大を図る仕組みを整えています。
さらに、約300億円規模の研究開発プロジェクトや、高度専門人材の育成プログラム拡充などを通じて供給力を強化します。これにより、10年以内に国内企業の売上高を約0.9兆円から3兆円以上に拡大させることを目指しています。
■「サイバーセキュリティ産業振興戦略」の概要

4.国内企業への期待と今後の展望
本戦略の取り組みに対し、セキュリティ業界からも高い期待が寄せられています。例えば、スタートアップ製品の導入促進や研究開発支援を通じて、国内セキュリティ産業を活性化させることが期待されています。また、サイバー攻撃の特異性に対応した製品開発や情報蓄積の重要性も指摘されています。
経済産業省は今後も業界の関係者と連携し、具体的な施策を通じて国内企業の競争力強化を後押ししていく方針です。これにより、日本全体の安全保障やデジタル赤字解消にもつながると考えられています。
■活用可能な経済産業省等の支援策
【スタートアップ関連施策全般】
●潜在力のある企業への集中投資(例:J-Startup)
●事業を支える資金供給拡大(例:ディープテック・スタートアップ支援事業等)
●海外市場への事業展開・ネットワーク構築(例: J-Startup、J-StarX)
【公共調達等を通じた事業拡大】
●「デジタルマーケットプレイス」の活用
●「防衛産業へのスタートアップ活用に向けた合同推進会」の活用※推進会開催にあたり、随時業界団体とも連携
●「大企業等のスタートアップ連携・調達加速化事業」の活用 ※今後、随時公募を実施
【国際標準に向けた対応】
●標準化活用支援制度(新市場創造型標準化制度)の活用
●国際ルール形成・市場創造型標準化推進事業費補助金の活用 ※今後、公募を実施
■今後のロードマップ

参考資料:「2024年度中小企業における情報セキュリティ対策の実態調査報告書」速報版(独立行政法人情報処理推進機構)
サイバーセキュリティお助け隊サービス(IPA)
サイバーセキュリティお助け隊サービス(厚生労働省)
サイバーセキュリティ産業振興戦略(経済産業省)
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タグ :サイバーセキュリティ産業振興戦略
2025年01月17日
R7.1.8 2025年はどうなる?暮らしに影響を与える変化とは
皆様こんにちは。
北野純一税理士事務所の北野です。
2025年は国内最大級のイベントとして期待される大阪・関西万博の開催を筆頭に、超高齢化社会への対策、マイナンバーカードの多様化、DXの更なる推進など、私たちの暮らしに影響を与える変化が訪れるでしょう。

1.大阪・関西万博で日本の技術力を世界へ発信
4月13日から10月13日まで開催される大阪・関西万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、会場となる夢洲(ゆめしま)で、最先端技術の展示や文化交流が行われます。特に注目されるのは、空飛ぶクルマや自動運転システムなどの未来型モビリティの実証実験です。
また、会場内では、AIやロボット技術を活用したサービス、再生可能エネルギーの実用化、次世代医療システムなど、日本が誇る先進技術が世界に向けて発信されます。
パビリオンでは、160を超える国・地域・国際機関が、それぞれの文化や最新技術を紹介。さらに、会場全体がスマートシティとして機能し、来場者は最新のデジタル技術を体験できます。この万博を通じて、日本は環境・健康・テクノロジーの分野における世界的なリーダーシップを示すことが期待されています。

2.2025年問題にみる超高齢化社会への対策
2025年問題は、団塊世代が全て75歳以上となり、5人に1人が後期高齢者という超高齢社会を迎えることを指します。深刻な課題として、医療・介護サービスの需要急増、認知症高齢者の増加、医療機関の不足、人材確保、そして社会保障費の増大による現役世代の負担増が挙げられます。

■現役世代が負担する社会保険料負担
(出所)日本年金機構ホームページ「厚生年金保険料額表」、全国健康保険協会ホームページ「健康保険料率等の推移」
これらの課題に対し、政府は主に4つの対策を進めています。第一に、地域包括ケアシステムの構築です。医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供し、高齢者が住み慣れた地域で暮らせる環境を整備します。
第二に、医療費負担の見直しです。2022年10月から一定以上の所得がある75歳以上の高齢者の医療費負担割合を1割から2割に引き上げ、世代間の公平性を確保しています。
第三に、予防医療の強化です。フレイル予防や生活習慣病対策を推進し、健康寿命の延伸を目指します。また、ICTやAIを活用したスマート医療の導入により、サービスの効率化と質の向上を図ります。
第四に、高齢者の就労支援です。企業への助成金支給や専門家による相談支援、シルバー人材センターの活用、ハローワークでの支援など、多様な施策を展開しています。これらの対策により、持続可能な社会保障制度の構築を目指しています。
3.マイナンバーカードと健康保険証の一体化
2024年12月2日以降、これまでの健康保険証は新たに発行されなくなり、マイナンバーカードと健康保険証の完全一体化が本格的にスタートしています。この制度変更により、医療サービスの質が大きく向上することが期待されています。
具体的なメリットとして、まず患者側では、過去の薬剤服用歴や特定健診情報が医療機関と正確に共有できるようになります。これにより、重複投薬や併用禁忌を防ぎ、より適切な医療サービスを受けることができます。また、高額療養費制度の限度額認定証が不要になるなど、手続きの簡素化も実現します。
医療機関側では、顔認証による確実な本人確認が可能になり、なりすまし受診のリスクが軽減されます。さらに、レセプトの返戻や未収金の減少、事務作業の効率化といったメリットも見込まれます。
保険者にとっても、保険証や限度額認定証の発行事務が減少し、資格喪失後の保険証使用による過誤請求の処理負担が軽減されるなど、業務の効率化が進むことになります。

4.2025年の崖を乗り越え、DX時代の新たなステージへ
2025年は、日本のIT業界にとって重要な転換点を迎えます。経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」とは、古い基幹システムの限界と人材不足による深刻なリスクを指しています。
多くの企業では、1990年代以降に構築した基幹システムが老朽化し、維持管理コストの増大や改修の困難さに直面しています。また、システムを支えてきた技術者の高齢化や人材不足も深刻な問題となっています。
■2025年の崖

しかし、この危機を契機に、多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)への本格的な移行を進めています。クラウドやマイクロサービスなど、最新のIT技術を活用したシステムの刷新が加速しており、AIやIoTを活用した業務の効率化や、新たなビジネスモデルの創出も進んでいます。
政府も「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を策定し、企業のDX推進を支援しています。具体的には、DX投資への税制優遇や、人材育成プログラムの提供などが実施されています。
2025年は、この「崖」を乗り越え、日本のデジタル化が本格的に花開く年となることが期待されています。企業は、この変革を通じて国際競争力を高め、新たな価値創造へとつながる基盤を整備することになります。
■DX実現シナリオ

DXレポート(経済産業省)より
参考資料:EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト
マイナンバーカードと健康保険証の一体化について(厚生労働省)
高年齢者雇用対策の概要(厚生労働省)
社会保障(財務省)
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北野純一税理士事務所の北野です。
2025年は国内最大級のイベントとして期待される大阪・関西万博の開催を筆頭に、超高齢化社会への対策、マイナンバーカードの多様化、DXの更なる推進など、私たちの暮らしに影響を与える変化が訪れるでしょう。

1.大阪・関西万博で日本の技術力を世界へ発信
4月13日から10月13日まで開催される大阪・関西万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、会場となる夢洲(ゆめしま)で、最先端技術の展示や文化交流が行われます。特に注目されるのは、空飛ぶクルマや自動運転システムなどの未来型モビリティの実証実験です。
また、会場内では、AIやロボット技術を活用したサービス、再生可能エネルギーの実用化、次世代医療システムなど、日本が誇る先進技術が世界に向けて発信されます。
パビリオンでは、160を超える国・地域・国際機関が、それぞれの文化や最新技術を紹介。さらに、会場全体がスマートシティとして機能し、来場者は最新のデジタル技術を体験できます。この万博を通じて、日本は環境・健康・テクノロジーの分野における世界的なリーダーシップを示すことが期待されています。

2.2025年問題にみる超高齢化社会への対策
2025年問題は、団塊世代が全て75歳以上となり、5人に1人が後期高齢者という超高齢社会を迎えることを指します。深刻な課題として、医療・介護サービスの需要急増、認知症高齢者の増加、医療機関の不足、人材確保、そして社会保障費の増大による現役世代の負担増が挙げられます。

■現役世代が負担する社会保険料負担
(出所)日本年金機構ホームページ「厚生年金保険料額表」、全国健康保険協会ホームページ「健康保険料率等の推移」
これらの課題に対し、政府は主に4つの対策を進めています。第一に、地域包括ケアシステムの構築です。医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供し、高齢者が住み慣れた地域で暮らせる環境を整備します。
第二に、医療費負担の見直しです。2022年10月から一定以上の所得がある75歳以上の高齢者の医療費負担割合を1割から2割に引き上げ、世代間の公平性を確保しています。
第三に、予防医療の強化です。フレイル予防や生活習慣病対策を推進し、健康寿命の延伸を目指します。また、ICTやAIを活用したスマート医療の導入により、サービスの効率化と質の向上を図ります。
第四に、高齢者の就労支援です。企業への助成金支給や専門家による相談支援、シルバー人材センターの活用、ハローワークでの支援など、多様な施策を展開しています。これらの対策により、持続可能な社会保障制度の構築を目指しています。
3.マイナンバーカードと健康保険証の一体化
2024年12月2日以降、これまでの健康保険証は新たに発行されなくなり、マイナンバーカードと健康保険証の完全一体化が本格的にスタートしています。この制度変更により、医療サービスの質が大きく向上することが期待されています。
具体的なメリットとして、まず患者側では、過去の薬剤服用歴や特定健診情報が医療機関と正確に共有できるようになります。これにより、重複投薬や併用禁忌を防ぎ、より適切な医療サービスを受けることができます。また、高額療養費制度の限度額認定証が不要になるなど、手続きの簡素化も実現します。
医療機関側では、顔認証による確実な本人確認が可能になり、なりすまし受診のリスクが軽減されます。さらに、レセプトの返戻や未収金の減少、事務作業の効率化といったメリットも見込まれます。
保険者にとっても、保険証や限度額認定証の発行事務が減少し、資格喪失後の保険証使用による過誤請求の処理負担が軽減されるなど、業務の効率化が進むことになります。

4.2025年の崖を乗り越え、DX時代の新たなステージへ
2025年は、日本のIT業界にとって重要な転換点を迎えます。経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」とは、古い基幹システムの限界と人材不足による深刻なリスクを指しています。
多くの企業では、1990年代以降に構築した基幹システムが老朽化し、維持管理コストの増大や改修の困難さに直面しています。また、システムを支えてきた技術者の高齢化や人材不足も深刻な問題となっています。
■2025年の崖

しかし、この危機を契機に、多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)への本格的な移行を進めています。クラウドやマイクロサービスなど、最新のIT技術を活用したシステムの刷新が加速しており、AIやIoTを活用した業務の効率化や、新たなビジネスモデルの創出も進んでいます。
政府も「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を策定し、企業のDX推進を支援しています。具体的には、DX投資への税制優遇や、人材育成プログラムの提供などが実施されています。
2025年は、この「崖」を乗り越え、日本のデジタル化が本格的に花開く年となることが期待されています。企業は、この変革を通じて国際競争力を高め、新たな価値創造へとつながる基盤を整備することになります。
■DX実現シナリオ

DXレポート(経済産業省)より
参考資料:EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト
マイナンバーカードと健康保険証の一体化について(厚生労働省)
高年齢者雇用対策の概要(厚生労働省)
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2024年12月06日
R6.12.4 賃金引上げ等の実態調査で見る日本企業の給与動向
皆様こんにちは。北野税理士事務所の北野です。
今回は、「日本企業の給与動向」に関する話題です。

厚生労働省が毎年実施している賃金引上げ等の実態調査は、重要な労働統計調査の一つです。
今年は7月20日~8月10日に実施、常用労働者100人以上を雇用する会社組織の民営企業で、無作為に3,622社を抽出し、1,783社より有効回答を得ています。
1.91.2%の企業が賃上げ実施、平均改定率4.1%で過去最高水準に
①賃金引上げ実施企業の割合
令和6年における賃金改定の実施状況を見ると、9月から12月の予定を含め、「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」と回答した企業の割合は91.2%となっており、前年の89.1%から2.1ポイント増加しています。
一方、「1人平均賃金を引き下げた・引き下げる」企業は0.1%(前年0.2%)とわずかで、「賃金改定を実施しない」企業は2.3%(前年5.4%)と大幅に減少しています。
企業規模による違いを見ても、すべての規模で賃金引上げを実施する企業の割合が9割を超えており、各規模とも前年の水準を上回っています。
この結果から、企業規模を問わず、積極的な賃金引上げの動きが広がっていることがわかります。
②賃金の改定額及び改定率
賃金改定状況(9月~12月予定を含む)を見ると、1人当たりの平均賃金改定額は11,961円(前年比9,437円)、1人平均賃金改定率は4.1%(前年比3.2%)となっています。
企業規模別では、1人当たりの平均賃金改定額と平均賃金改定率が全ての企業規模で前年を上回っています。
労働組合の有無については、労働組合がある場合の1人当たりの平均賃金改定額は13,668円(前年比10,650円)、1人平均賃金改定率は4.5%(前年比3.4%)、労働組合がない場合は10,170円(前年比8,302円)、3.6%(前年比3.1%)になっています。
また下の表で示す通り、年次推移は「1人平均賃金の改定額」と「1人平均賃金の改定率」は、平成23年の調査以降、増加傾向にあり、令和2年と3年の調査で減少したものの、令和4年、5年、6年の調査では再び上昇しています。
■1人平均賃金の改定額及び改定率の推移

(注)賃金の改定を実施した又は予定していて額も決定している企業及び賃金の改定を実施しない企業についての数値である。
2.定期昇給・ベア実施率が上昇、一般職で最大83.4%
2024年の賃金引上げにおける定期昇給とベースアップの実施状況について、特徴的な傾向が見られます。
定期昇給については、一般職での実施率が83.4%(前年79.5%)と高く、管理職でも76.8%(前年71.8%)と前年を上回っています。実施しないとする企業は、一般職で2.6%、管理職で4.3%と低水準にとどまっています。
■定期昇給を行った・行う企業割合の推移

(注)賃金の改定を実施した又は予定している企業及び改定を実施しない企業に占める割合である。
一方、ベースアップについては、一般職で52.1%(前年49.5%)、管理職で47.0%(前年43.4%)の企業が実施しており、いずれも前年より増加しています。
実施しない企業は、一般職で14.9%(前年18.2%)、管理職で18.1%(前年21.0%)となっています。
全体的な傾向として、定期昇給・ベースアップともに実施率が上昇しており、特に一般職における実施率が管理職を上回っている点が特徴です。
これは、人材確保や物価上昇への対応として、企業が積極的な賃金改定に取り組んでいることを示しています。
3.2024年の賃金改定要因:企業業績と人材確保が主要因に
2024年の賃金改定において、企業が最も重視した要素は「企業の業績」で35.2%(前年36.0%)を占めています。
次いで「労働力の確保・定着」が14.3%(前年16.1%)、「雇用の維持」が12.8%(前年11.6%)となっています。
賃金の改定の決定に当たり「企業の業績」を重視したと回答した企業(複数回答)の業績評価では、「良い」と回答した企業が45.6%と半数近くを占め、「悪い」は15.2%、「どちらともいえない」が37.9%となっています。
業績が「良い」と評価した企業の主な理由は「販売数の増加・減少」(35.0%)が最も多く、「悪い」と評価した企業でも「販売数の増加・減少」(9.1%)が主な理由となっています。
これらの結果から、企業の業績状況が賃金改定の重要な判断材料となっている一方で、人材の確保・定着も重要な要素として認識されていることがわかります。
■企業規模、賃金の改定の決定に当たり最も重視した要素別企業割合

(注1) 〔 〕内は、全企業に占める賃金の改定を実施した又は予定していて額も決定している企業の割合である。
(注2) 「複数回答計」は、その要素を重視した企業(最も重視したものを1つ、そのほかに重視したものを2つまでの最大3つの複数回答による)の割合である。
4.2024年以降の賃金動向:継続的な賃上げ傾向
2024年以降の賃金動向については、引き続き上昇傾向が継続すると予測されています。
この背景には、3つの重要な要因があります。
第一に、企業の91.2%が賃上げを実施・予定していることから、賃上げの流れが定着していると考えられます。
特に、物価上昇への対応や人材確保の必要性から、企業は積極的な賃金改定を継続する見通しです。
第二に、政府が掲げる「構造的な賃上げ」の実現に向けた支援策の強化があります。
中小企業向けの賃上げ支援や税制優遇措置により、企業規模を問わない賃上げの広がりが期待されています。
第三に、人手不足の深刻化です。特に中小企業では、人材確保・定着のため、賃上げを重要な経営戦略として位置づける企業が増加しています。
これらの要因から、2024年以降も賃金の上昇基調は維持されると予測されます。
■参考資料
賃金引上げ等の実態に関する調査:結果の概要(厚生労働省)
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2024年04月11日
5棟10室基準」とは

一戸建てなら5棟、またはアパート・マンションなら10室。この基準以上の貸付であるなら、その不動産賃貸業は「事業的規模」であるいうわけです。なお、一戸建てとアパートの両方ある場合、一戸建て1棟をアパート2室として、合計10室あれば事業的規模と考えます。事業に至らない場合は「事業以外の業務」といいます。
事業的規模になると、資産損失、貸倒損失、専従者給与の必要経費算入、青色申告控除などが認められるので、事業的規模か業務的規模かの判定は重要です。
所得税基本通達26-9
さて、この「5棟10室基準」の根拠は、所得税基本通達26-9です。
(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)
26-9 建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。
(1)貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
(2)独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること
「原則はその貸付けが社会通念上事業といえる程度の規模かどうか(実質基準)で判定すべきだが、事実として5棟または10室以上(形式基準)の貸付けであれば事業的規模として扱う」という内容であり、形式基準が先ではないことが分かります。
この文章の作りからは、「形式基準を満たしていれば、事業的規模である」といえますが、「形式基準を満たしていないから、事業的規模にはならない」とまではいえません。
実質基準である「社会通念上事業と称するに至る程度の規模」の内容が分かりにくいことに加え、形式基準にも「おおむね」が付いています。納税者と税務当局との見解が違うことになっても、そう不思議ではないように思います。
国税不服審判所の裁決事例
実際、納税者と税務当局との間で事業的規模かどうかの争いになり、国税不服審判所で裁決が出た事例をみてみましょう。実質的にどのように判断されたかを確認することができます。
このケースの賃貸物件は、形式基準未満(3階建て1棟)であり、年間賃貸料収入は約950万円でした。
平19.12.4裁決(裁決事例集No.74 37頁)
〇事業とは、自己の計算と危険において営利を目的として対価を得て継続的に行う経済活動のことである。
〇不動産貸付けが不動産所得を生ずべき事業に該当するか否かは、①営利性・有償性の有無、②継続性・反復性の有無、③自己の危険と計算における事業遂行性の有無、④取引に費やした精神的・肉体的労力の程度、⑤人的・物的設備の有無、⑥取引の目的、⑦事業を営む者の職歴・社会的地位・生活状況などの諸点を総合して、社会通念上事業といい得るか否かによって判断するのが相当と解される。
審判所では上記の諸点について検討を行い、①②⑤については事業性を認めたものの、③④については希薄であるとし、①~⑦を総合的に勘案した結果、「社会通念上事業と称するに至る程度のものとは認められない」と判断しました。下記のリンク先を参照すると詳しくみることができます。
形式基準の今後
裁決文のなかには「事業であるか否かの基準は必ずしも明確ではなく、その事業概念は、最終的には社会通念に従ってこれを判断するほかはないというべきである」と書かれています。納税者が判断するのが難しいのも当然であり、ある程度は形式基準に頼らざるを得ないのが実態でしょう。
なお、税務大学校の研究活動では、所得税基本通達26-9について、昭和45年7月の制定時から見直しが行われていないこと、その基準の根拠も明確ではないこと、現時点においては課税上問題と考えられるケースがあることなどから、この通達を再考する必要性に言及する論考が紹介されています。
LINK
国税不服審判所 平19.12.4裁決 裁決事例集No.74 37頁
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