2023年11月27日
オンラインゲームと消費税
北野税理士事務所の北野です。
今回は、オンラインゲームと消費税の関係についてお話します。

オンラインゲームが人気です。スマホでゲームを楽しむ人の姿は、すっかり日常生活に溶け込んでいます。
『ファミ通ゲーム白書2023』によると、2022年の国内のゲーム市場規模は2兆316億円でした。そのうちの約8割(1兆6568億円)を占めたのが、スマートフォン、タブレットやパソコンなどを利用した「オンラインプラットフォーム」でした。
オンラインゲームはゲーム市場の主流といえます。
1.海外ゲーム事業者への支払い
さて、人気のオンラインゲーム。
ゲームアプリそのものが有料の場合はもちろん、アプリは無料でもゲーム内で課金をすれば、当然お金の支払いが発生します。ゲームアプリの開発業者が国内にいるか国外にいるかは関係なく、その支払いには消費税が課税されます。
「国外の事業者との取引は、そもそも消費税の課税対象外」というのは過去の話。たしかに2015年9月までは、国外の事業者からインターネット等を通じて受けたサービスには消費税が課税されませんでした。
しかし、同年10月からは消費税がかかるようになりました。
2.「国外取引」から「国内取引」へ
同年の税制改正では、インターネット等を介して行われる電子書籍・音楽・広告の配信などの役務の提供を、消費税法上「電気通信利用役務の提供」と位置付けました。
そのうえで、その役務の提供が国内取引に該当するかどうかの内外判定基準を、役務の提供を行う者の事務所等の所在地ではなく、役務の提供を受ける者の住所等としました。
その適用が同年10月1日からだったため、海外発のオンラインゲームを利用者が購入したり、課金したりした場合、9月までは「国外取引として不課税」、10月からは「国内取引として課税」という扱いになったのです。
3.消費税30億円の申告漏れ
ところで、消費税の納税義務は事業者が負っています。
消費税をもらった海外ゲーム事業者は、日本に消費税を納めているのでしょうか。
残念ながらそう上手くはいきません。
つい先日も、人気オンラインゲームを配信するルクセンブルクの会社が、東京国税局から3年間で消費税約30億円の申告漏れを指摘されていた、とのニュースが報道されました。
このゲームは無料で遊べますが、アイテムを購入するためには課金が必要で、その課金の一部である約300億円の売上を申告から漏らしていたとのことです。
4.大手プラットフォーム企業に代行納税を
このケースは幸いにも明らかになりましたが、国内に拠店がない海外ゲーム事業者も多く、その場合は国税当局も実態の把握や徴収が難しいというのが現実です。
つまり、利用者が消費税を支払っても、国に届かず事業者のふところに入ったままになっているのです。
日本政府はこの事態を重くみており、利用者と海外ゲーム事業者のやり取りを介在するグーグルやアップルなどの大手プラットフォーム企業に、消費税の代行納税をさせる制度を検討しています。
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今回は、オンラインゲームと消費税の関係についてお話します。

オンラインゲームが人気です。スマホでゲームを楽しむ人の姿は、すっかり日常生活に溶け込んでいます。
『ファミ通ゲーム白書2023』によると、2022年の国内のゲーム市場規模は2兆316億円でした。そのうちの約8割(1兆6568億円)を占めたのが、スマートフォン、タブレットやパソコンなどを利用した「オンラインプラットフォーム」でした。
オンラインゲームはゲーム市場の主流といえます。
1.海外ゲーム事業者への支払い
さて、人気のオンラインゲーム。
ゲームアプリそのものが有料の場合はもちろん、アプリは無料でもゲーム内で課金をすれば、当然お金の支払いが発生します。ゲームアプリの開発業者が国内にいるか国外にいるかは関係なく、その支払いには消費税が課税されます。
「国外の事業者との取引は、そもそも消費税の課税対象外」というのは過去の話。たしかに2015年9月までは、国外の事業者からインターネット等を通じて受けたサービスには消費税が課税されませんでした。
しかし、同年10月からは消費税がかかるようになりました。
2.「国外取引」から「国内取引」へ
同年の税制改正では、インターネット等を介して行われる電子書籍・音楽・広告の配信などの役務の提供を、消費税法上「電気通信利用役務の提供」と位置付けました。
そのうえで、その役務の提供が国内取引に該当するかどうかの内外判定基準を、役務の提供を行う者の事務所等の所在地ではなく、役務の提供を受ける者の住所等としました。
その適用が同年10月1日からだったため、海外発のオンラインゲームを利用者が購入したり、課金したりした場合、9月までは「国外取引として不課税」、10月からは「国内取引として課税」という扱いになったのです。
3.消費税30億円の申告漏れ
ところで、消費税の納税義務は事業者が負っています。
消費税をもらった海外ゲーム事業者は、日本に消費税を納めているのでしょうか。
残念ながらそう上手くはいきません。
つい先日も、人気オンラインゲームを配信するルクセンブルクの会社が、東京国税局から3年間で消費税約30億円の申告漏れを指摘されていた、とのニュースが報道されました。
このゲームは無料で遊べますが、アイテムを購入するためには課金が必要で、その課金の一部である約300億円の売上を申告から漏らしていたとのことです。
4.大手プラットフォーム企業に代行納税を
このケースは幸いにも明らかになりましたが、国内に拠店がない海外ゲーム事業者も多く、その場合は国税当局も実態の把握や徴収が難しいというのが現実です。
つまり、利用者が消費税を支払っても、国に届かず事業者のふところに入ったままになっているのです。
日本政府はこの事態を重くみており、利用者と海外ゲーム事業者のやり取りを介在するグーグルやアップルなどの大手プラットフォーム企業に、消費税の代行納税をさせる制度を検討しています。
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2023年11月15日
事業主が同一生計の親族に支払う対価について(所得税法第56条)
北野純一税理士事務所の北野です。
今回は事業主が同一生計の親族に支払う対価について説明したいと思います。

父親が廃業して、同居の息子であるAさんが事業(製造業)を引
き継ぐことになりました。父親名義の工場や機械があり、Aさん
はそれらを父親から借りて事業をスタートすることに。相場よ
りも若干低めの賃借料を父親に支払い、事業の必要経費にしよ
うと考えていたのですが…。
同居の父親に支払う賃借料は必要経費にできない
結論から言えば、Aさんが考えたような単純な話にはなりません。所得税法第56条によれば、同一生計の父親に支払う賃借料は必要経費にできないのです。条文そのものは読みづらい文章なので、同条をできるだけ簡単に書き換えると以下のようになります。
① 事業主が同一生計の親族に対して事業に関連する対価を支払っても、事業主の必要経費にはできない。
② その親族が事業主から対価をもらうのに必要な経費は、事業主の必要経費とする。
③ その親族が事業主からもらう対価は親族にとって収益でないとみなすし、その対価をもらうのに必要な経費も親族にとって費用でないとみなす。
つまり、Aさんの場合は以下のようになります
① Aさんが同居の父親に賃借料を支払っても、それをAさんの必要経費にすることはできない。
② 父親が支払う工場の固定資産税や工場や機械の減価償却費は、Aさんの必要経費になる。
③ 父親がAさんから対価をもらっても父親の収益でないとみなすし、父親が対価をもらうための経費を払っても父親の費用でないとみなす。
なんとなく違和感を覚える人もいるのではないでしょうか?
課税される「単位」は何か
明治20年に創設された所得税法は、課税の単位を「家族」においていました(同居の家族の所得はすべて「戸主」の所得に合算されていました)。それが、第二次世界大戦後のシャウプ勧告を受けて、課税の単位は基本的に「個人」におかれるようになりました(昭和25年改正)。
しかし、事業所得については、その特例として家族単位課税の考え方が残されました。所得税法第56条はその流れの延長線上にあるといえます。そのように決められた理由として、当時の個人事業は家族全体で営むのが普通であり、家族構成員に対価を支払うような慣行があるとはいえなかったこと、家族構成員への対価を必要経費として認めてしまうと、恣意的な所得分割が行われてしまうこと、家族構成員への適正な対価の認定や支払いの事実の確認が困難であることなどが挙げられています。
なお、特例である56条のさらに特例として、第57条では「青色事業専従者給与」「事業専従者控除」については、必要経費への算入を認めています。
第56条の「廃止」・「見直し」の意見書
実は、所得税法56条はその合理性について以前から疑問が投げかけられてきました。それは、制定から何十年も経過し、個人事業のあり方や家族関係が大きく変化してきたからです。また、白色申告者にも平成26年から記帳とその保管が義務づけられました。第56条が必要とされた理由そのものが、時代の変化とともに揺らいできているのです。
実際、第56条の「廃止」や「見直し」の決議・意見書を採択した自治体は、2022年9月の時点で500を越えています。いくつかの税理士会や日弁連も同様の意見書を採択しています。
それらのなかでは、「世界の主要国で、家族従業員への給与を必要経費として認めている」「白色申告者にも記帳義務が課されたのに、事業専従者控除が少額すぎて不合理である」「第56条は戦前の家制度の名残であり、日本国憲法と矛盾する」などの意見が述べられています。
このような声がさらに大きくなれば、この条文にもきっと変化が訪れることでしょう。第56条についての各地方自治体の意見書は、インターネットで検索すれば容易に確認できます。なお、国税庁の『税務大学校論叢30号』(1998年)には、研究活動としてではありますが、同条の廃止に触れた論文が掲載されています。
参照:「親族が事業から受ける対価の取扱いについての一考察」(国税庁)
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今回は事業主が同一生計の親族に支払う対価について説明したいと思います。

父親が廃業して、同居の息子であるAさんが事業(製造業)を引
き継ぐことになりました。父親名義の工場や機械があり、Aさん
はそれらを父親から借りて事業をスタートすることに。相場よ
りも若干低めの賃借料を父親に支払い、事業の必要経費にしよ
うと考えていたのですが…。
同居の父親に支払う賃借料は必要経費にできない
結論から言えば、Aさんが考えたような単純な話にはなりません。所得税法第56条によれば、同一生計の父親に支払う賃借料は必要経費にできないのです。条文そのものは読みづらい文章なので、同条をできるだけ簡単に書き換えると以下のようになります。
① 事業主が同一生計の親族に対して事業に関連する対価を支払っても、事業主の必要経費にはできない。
② その親族が事業主から対価をもらうのに必要な経費は、事業主の必要経費とする。
③ その親族が事業主からもらう対価は親族にとって収益でないとみなすし、その対価をもらうのに必要な経費も親族にとって費用でないとみなす。
つまり、Aさんの場合は以下のようになります
① Aさんが同居の父親に賃借料を支払っても、それをAさんの必要経費にすることはできない。
② 父親が支払う工場の固定資産税や工場や機械の減価償却費は、Aさんの必要経費になる。
③ 父親がAさんから対価をもらっても父親の収益でないとみなすし、父親が対価をもらうための経費を払っても父親の費用でないとみなす。
なんとなく違和感を覚える人もいるのではないでしょうか?
課税される「単位」は何か
明治20年に創設された所得税法は、課税の単位を「家族」においていました(同居の家族の所得はすべて「戸主」の所得に合算されていました)。それが、第二次世界大戦後のシャウプ勧告を受けて、課税の単位は基本的に「個人」におかれるようになりました(昭和25年改正)。
しかし、事業所得については、その特例として家族単位課税の考え方が残されました。所得税法第56条はその流れの延長線上にあるといえます。そのように決められた理由として、当時の個人事業は家族全体で営むのが普通であり、家族構成員に対価を支払うような慣行があるとはいえなかったこと、家族構成員への対価を必要経費として認めてしまうと、恣意的な所得分割が行われてしまうこと、家族構成員への適正な対価の認定や支払いの事実の確認が困難であることなどが挙げられています。
なお、特例である56条のさらに特例として、第57条では「青色事業専従者給与」「事業専従者控除」については、必要経費への算入を認めています。
第56条の「廃止」・「見直し」の意見書
実は、所得税法56条はその合理性について以前から疑問が投げかけられてきました。それは、制定から何十年も経過し、個人事業のあり方や家族関係が大きく変化してきたからです。また、白色申告者にも平成26年から記帳とその保管が義務づけられました。第56条が必要とされた理由そのものが、時代の変化とともに揺らいできているのです。
実際、第56条の「廃止」や「見直し」の決議・意見書を採択した自治体は、2022年9月の時点で500を越えています。いくつかの税理士会や日弁連も同様の意見書を採択しています。
それらのなかでは、「世界の主要国で、家族従業員への給与を必要経費として認めている」「白色申告者にも記帳義務が課されたのに、事業専従者控除が少額すぎて不合理である」「第56条は戦前の家制度の名残であり、日本国憲法と矛盾する」などの意見が述べられています。
このような声がさらに大きくなれば、この条文にもきっと変化が訪れることでしょう。第56条についての各地方自治体の意見書は、インターネットで検索すれば容易に確認できます。なお、国税庁の『税務大学校論叢30号』(1998年)には、研究活動としてではありますが、同条の廃止に触れた論文が掲載されています。
参照:「親族が事業から受ける対価の取扱いについての一考察」(国税庁)
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