2024年12月20日

R6.12.18 2025年度税制改正へ向けた、各省庁の要望とは?



皆様こんにちは。

北野税理士事務所の北野です。

今回は、2025年度税制改正へ向けた各省庁の要望についての内容です。






例年だと12月中旬に2025年度税制改正大綱が公表されていますが、今年は「103万円の壁の見直し」が議論されるなど協議が続いているようです。

そこで各省庁からの要望を見てみると、今回の税制改正では家計支援策と企業の成長促進などが大きな柱となっています。

一方で、政府の財政健全化目標との整合性も問われており、減税と増税のバランスが焦点のようです。

以下では、企業や個人に大きな影響を与える可能性のある主要な要望内容を紹介します。



1.物価高騰対策と家計支援



総務省と厚生労働省を中心に、物価高騰に直面する家計を支援するための税制措置が要望されています。

また、住宅取得支援策として、住宅ローン減税等に係る所要の措置、ガソリン減税など、適用要件の緩和が提案されています。

これらの措置により、実質的な可処分所得の増加を図る狙いがあります。



■住宅ローン減税等に係る所要の措置



(資料)令和7年度 国土交通省税制改正要望事項




2.企業の成長を後押しする税制措置



経済産業省が中心となり、企業の成長を後押しする税制措置の拡充を求めています。

賃上げ促進税制については、現行の税額控除率のさらなる引き上げや、適用要件の見直しが検討されています。特に、中小企業向けの支援措置を手厚くする方向性が示されており、地域経済の活性化にも配慮した内容となっています。



■令和7 年度税制改正に関する経済産業省要望のポイント




(資料)令和7年度税制改正に関する経済産業省要望のポイント




3.金融・資産関連の税制改正要望




金融庁では資産所得倍増プランの実現に向けて、NISAの利便性向上、企業年金・個人年金制度の見直しを要望しています。

また、国際金融センター実現に向け、クロスボーダー投資の活性化に向けた税制改正や、生命保険料控除制度の拡充などが提案されています。



■NISA の利便性向上等




(資料)令和7(2025)年度税制改正要望について(金融庁)



■金融庁の令和7(2025)年度税制改正要望における主な要望項目■



1.「資産所得倍増プラン」及び「資産運用立国」の実現

・NISAの利便性向上等

・企業年金・個人年金制度の見直しに伴う税制上の所要の措置〔厚生労働省主担〕

・上場株式等の相続税に係る物納要件等の見直し

・金融所得課税の一体化〔農林水産省・経済産業省が共同要望〕



2.「世界・アジアの国際金融ハブ」としての国際金融センターの実現

・クロスボーダー投資の活性化に向けた租税条約等の手続の見直し



3.安心な国民生活の実現

・生命保険料控除制度の拡充〔農林水産省・厚生労働省・経済産業省・こども家庭庁が共同要望〕

・火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実




■参考資料

令和7年度税制改正要望(財務省)

※本稿は2024年8月時点での各省庁からの要望内容をまとめたものです。実際の税制改正大綱では、内容が変更される可能性がありますので、ご了承ください。


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Posted by 北野純一税理士事務所 at 14:47Comments(0)税務

2024年12月06日

R6.12.4 賃金引上げ等の実態調査で見る日本企業の給与動向


皆様こんにちは。北野税理士事務所の北野です。

今回は、「日本企業の給与動向」に関する話題です。






厚生労働省が毎年実施している賃金引上げ等の実態調査は、重要な労働統計調査の一つです。
今年は7月20日~8月10日に実施、常用労働者100人以上を雇用する会社組織の民営企業で、無作為に3,622社を抽出し、1,783社より有効回答を得ています。





1.91.2%の企業が賃上げ実施、平均改定率4.1%で過去最高水準に



①賃金引上げ実施企業の割合



令和6年における賃金改定の実施状況を見ると、9月から12月の予定を含め、「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」と回答した企業の割合は91.2%となっており、前年の89.1%から2.1ポイント増加しています。

一方、「1人平均賃金を引き下げた・引き下げる」企業は0.1%(前年0.2%)とわずかで、「賃金改定を実施しない」企業は2.3%(前年5.4%)と大幅に減少しています。

企業規模による違いを見ても、すべての規模で賃金引上げを実施する企業の割合が9割を超えており、各規模とも前年の水準を上回っています。
この結果から、企業規模を問わず、積極的な賃金引上げの動きが広がっていることがわかります。



②賃金の改定額及び改定率



賃金改定状況(9月~12月予定を含む)を見ると、1人当たりの平均賃金改定額は11,961円(前年比9,437円)、1人平均賃金改定率は4.1%(前年比3.2%)となっています。
企業規模別では、1人当たりの平均賃金改定額と平均賃金改定率が全ての企業規模で前年を上回っています。

労働組合の有無については、労働組合がある場合の1人当たりの平均賃金改定額は13,668円(前年比10,650円)、1人平均賃金改定率は4.5%(前年比3.4%)、労働組合がない場合は10,170円(前年比8,302円)、3.6%(前年比3.1%)になっています。

また下の表で示す通り、年次推移は「1人平均賃金の改定額」と「1人平均賃金の改定率」は、平成23年の調査以降、増加傾向にあり、令和2年と3年の調査で減少したものの、令和4年、5年、6年の調査では再び上昇しています。



■1人平均賃金の改定額及び改定率の推移




(注)賃金の改定を実施した又は予定していて額も決定している企業及び賃金の改定を実施しない企業についての数値である。



2.定期昇給・ベア実施率が上昇、一般職で最大83.4%



2024年の賃金引上げにおける定期昇給とベースアップの実施状況について、特徴的な傾向が見られます。
定期昇給については、一般職での実施率が83.4%(前年79.5%)と高く、管理職でも76.8%(前年71.8%)と前年を上回っています。実施しないとする企業は、一般職で2.6%、管理職で4.3%と低水準にとどまっています。



■定期昇給を行った・行う企業割合の推移





(注)賃金の改定を実施した又は予定している企業及び改定を実施しない企業に占める割合である。



一方、ベースアップについては、一般職で52.1%(前年49.5%)、管理職で47.0%(前年43.4%)の企業が実施しており、いずれも前年より増加しています。
実施しない企業は、一般職で14.9%(前年18.2%)、管理職で18.1%(前年21.0%)となっています。

全体的な傾向として、定期昇給・ベースアップともに実施率が上昇しており、特に一般職における実施率が管理職を上回っている点が特徴です。
これは、人材確保や物価上昇への対応として、企業が積極的な賃金改定に取り組んでいることを示しています。



3.2024年の賃金改定要因:企業業績と人材確保が主要因に



2024年の賃金改定において、企業が最も重視した要素は「企業の業績」で35.2%(前年36.0%)を占めています。
次いで「労働力の確保・定着」が14.3%(前年16.1%)、「雇用の維持」が12.8%(前年11.6%)となっています。

賃金の改定の決定に当たり「企業の業績」を重視したと回答した企業(複数回答)の業績評価では、「良い」と回答した企業が45.6%と半数近くを占め、「悪い」は15.2%、「どちらともいえない」が37.9%となっています。

業績が「良い」と評価した企業の主な理由は「販売数の増加・減少」(35.0%)が最も多く、「悪い」と評価した企業でも「販売数の増加・減少」(9.1%)が主な理由となっています。

これらの結果から、企業の業績状況が賃金改定の重要な判断材料となっている一方で、人材の確保・定着も重要な要素として認識されていることがわかります。



■企業規模、賃金の改定の決定に当たり最も重視した要素別企業割合





(注1) 〔 〕内は、全企業に占める賃金の改定を実施した又は予定していて額も決定している企業の割合である。

(注2) 「複数回答計」は、その要素を重視した企業(最も重視したものを1つ、そのほかに重視したものを2つまでの最大3つの複数回答による)の割合である。




4.2024年以降の賃金動向:継続的な賃上げ傾向



2024年以降の賃金動向については、引き続き上昇傾向が継続すると予測されています。
この背景には、3つの重要な要因があります。

第一に、企業の91.2%が賃上げを実施・予定していることから、賃上げの流れが定着していると考えられます。
特に、物価上昇への対応や人材確保の必要性から、企業は積極的な賃金改定を継続する見通しです。

第二に、政府が掲げる「構造的な賃上げ」の実現に向けた支援策の強化があります。
中小企業向けの賃上げ支援や税制優遇措置により、企業規模を問わない賃上げの広がりが期待されています。

第三に、人手不足の深刻化です。特に中小企業では、人材確保・定着のため、賃上げを重要な経営戦略として位置づける企業が増加しています。
これらの要因から、2024年以降も賃金の上昇基調は維持されると予測されます。



■参考資料

賃金引上げ等の実態に関する調査:結果の概要(厚生労働省)


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Posted by 北野純一税理士事務所 at 12:11Comments(0)経営経済