2024年05月10日
ダブルワーク、青色事業専従者も可能?
皆様こんにちは。北野税理士事務所の北野です。
今回は、青色専従者のダブルワークについてお伝えしていきたいと思います。

AとBは夫婦です。個人事業を営んでいるA(個人事業主)の青色専従者として給与をもらいながら、Bが外に働きに行くことはできるのでしょうか。もしくは、もともと外でパートをしながらAの事業を手伝っていたBは、税務署に届け出をすれば専従者給与をもらうことができるのでしょうか。
夫婦合わせての収入を増やしつつ節税のことも考えれば、上記のように考えるのは十分あり得る話です。実態として二か所で仕事をしていれば、それぞれから仕事に見合った給与を受け取るのは、社会的には当たり前のことです。
◆青色事業専従者給与は特例措置
しかし、ここで問題になるのが所得税法に残されている家族単位課税の考え方です(参照:コラム『事業主が同一生計の親族に支払う対価について(所得税法第56条)』2023年11月14日)。
事業主が同一生計の親族に支払う対価については原則経費として認めず、青色事業専従者給与等については特例で必要経費として認めるというものです。
特例なのでいろいろと制限がついており、青色事業専従者のダブルワークはそれに引っかかってしまうのです。
◆ダブルワークは条件付きで可能
今回のテーマの結論を先に述べましょう。
青色事業専従者として給与をもらいながら、パートやアルバイトなどで他から給与をもらうことは条件付きで可能です。
青色専従者給与は「事業に専従する」親族に対する給与です。
「事業に専従する」の判定に直接関係するのは、所得税法施行令165条1項と2項です。少し長いですが、抜粋します。
(親族が事業に専ら従事するかどうかの判定)
第百六十五条 法第五十七条第一項又は第三項(事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等)に規定する居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が専らその居住者の営むこれらの規定に規定する事業に従事するかどうかの判定は、当該事業に専ら従事する期間がその年を通じて六月をこえるかどうかによる。ただし、同条第一項の場合にあつては、次の各号のいずれかに該当するときは、当該事業に従事することができると認められる期間を通じてその二分の一に相当する期間をこえる期間当該事業に専ら従事すれば足りるものとする
一 当該事業が年の中途における開業 、廃業、休業又はその居住者の死亡、当該事業が季節営業であることその他の理由によりその年中を通じて営まれなかつたこと。
二 当該事業に従事する者の死亡、長期にわたる病気、婚姻その他相当の理由によりその年中を通じてその居住者と生計を一にする親族として当該事業に従事することができなかつたこと。
2 前項の場合において、同項に規定する親族につき次の各号の一に該当する者である期間があるときは、当該期間は、同項に規定する事業に専ら従事する期間に含まれないものとする。
一 学校教育法第一条(学校の範囲)、第百二十四条(専修学校)又は第百三十四条第一項(各種学校)の学校の学生又は生徒である者(夜間において授業を受ける者で昼間を主とする当該事業に従事するもの、昼間において授業を受ける者で夜間を主とする当該事業に従事するもの、同法第百二十四条又は同項の学校の生徒で常時修学しないものその他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)
二 他に職業を有する者(その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)
三 老衰その他心身の障害により事業に従事する能力が著しく阻害されている者
上記の条文をごく簡単にまとめれば、以下の通りです。
①1年であれば6か月以上「専ら従事する」(または、従事可能期間の半分以上を「専ら従事する」)ならOK。
②学生や生徒だったり、他に仕事をしていたりすれば「専ら従事する」とはいえない。ただし、昼は学校に行って夜は事業に従事する、他の仕事の時間が短いなどの理由で「専ら従事することが妨げられないと認められる者」は、例外的にOK。
◆簡単には考えるのはNG
A、Bの夫婦の場合、実際にBがAの事業に専ら従事しており、他の仕事がその妨げになっていないなら、青色事業専従者のダブルワークは可能であるといえます。
しかし、簡単に考えてはいけません。
他に仕事を持つ妻に支払った青色専従者給与の可否について争われた裁判では、上記まとめ②の「専ら従事することが妨げられないと認められる者」という例外に当たるかどうかが問題になりました。
そして、この例外に該当するかどうかは他の職業に従事する期間が短く、その事業に専ら従事することが妨げられないことが一見して明らかであるかどうか、実質的にその事業に専ら従事することが妨げられないと認められるかどうかによって判断するのが相当という考えが示されました。
この裁判では、妻の本業の就業時間を裏付ける資料はなく、供述だけでした。
また、本業の給与よりも他の業務の報酬の方が高額でした。
裁判所は、本業とそれ以外の仕事について、業務の性質、内容、従事の態様その他の事情を検討し、「専ら従事することが妨げられないと認められる者には該当しない」としたため、妻への青色専従者給与は認められませんでした。
◆「本業を妨げてはいない」という客観的証拠
以上のようなことを考慮すれば、青色事業専従者がダブルワークをする場合、他の仕事が「本業に専ら従事することを妨げてはいない」という客観的証拠を残しておくべきでしょう。
具体的にはタイムカードや業務日報などで業務時間や業務内容を明確にしておくことです。
さらには、本業と他の仕事の業務時間や報酬のバランスなども不自然にならないように気を付ける必要があります。
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今回は、青色専従者のダブルワークについてお伝えしていきたいと思います。

AとBは夫婦です。個人事業を営んでいるA(個人事業主)の青色専従者として給与をもらいながら、Bが外に働きに行くことはできるのでしょうか。もしくは、もともと外でパートをしながらAの事業を手伝っていたBは、税務署に届け出をすれば専従者給与をもらうことができるのでしょうか。
夫婦合わせての収入を増やしつつ節税のことも考えれば、上記のように考えるのは十分あり得る話です。実態として二か所で仕事をしていれば、それぞれから仕事に見合った給与を受け取るのは、社会的には当たり前のことです。
◆青色事業専従者給与は特例措置
しかし、ここで問題になるのが所得税法に残されている家族単位課税の考え方です(参照:コラム『事業主が同一生計の親族に支払う対価について(所得税法第56条)』2023年11月14日)。
事業主が同一生計の親族に支払う対価については原則経費として認めず、青色事業専従者給与等については特例で必要経費として認めるというものです。
特例なのでいろいろと制限がついており、青色事業専従者のダブルワークはそれに引っかかってしまうのです。
◆ダブルワークは条件付きで可能
今回のテーマの結論を先に述べましょう。
青色事業専従者として給与をもらいながら、パートやアルバイトなどで他から給与をもらうことは条件付きで可能です。
青色専従者給与は「事業に専従する」親族に対する給与です。
「事業に専従する」の判定に直接関係するのは、所得税法施行令165条1項と2項です。少し長いですが、抜粋します。
(親族が事業に専ら従事するかどうかの判定)
第百六十五条 法第五十七条第一項又は第三項(事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等)に規定する居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が専らその居住者の営むこれらの規定に規定する事業に従事するかどうかの判定は、当該事業に専ら従事する期間がその年を通じて六月をこえるかどうかによる。ただし、同条第一項の場合にあつては、次の各号のいずれかに該当するときは、当該事業に従事することができると認められる期間を通じてその二分の一に相当する期間をこえる期間当該事業に専ら従事すれば足りるものとする
一 当該事業が年の中途における開業 、廃業、休業又はその居住者の死亡、当該事業が季節営業であることその他の理由によりその年中を通じて営まれなかつたこと。
二 当該事業に従事する者の死亡、長期にわたる病気、婚姻その他相当の理由によりその年中を通じてその居住者と生計を一にする親族として当該事業に従事することができなかつたこと。
2 前項の場合において、同項に規定する親族につき次の各号の一に該当する者である期間があるときは、当該期間は、同項に規定する事業に専ら従事する期間に含まれないものとする。
一 学校教育法第一条(学校の範囲)、第百二十四条(専修学校)又は第百三十四条第一項(各種学校)の学校の学生又は生徒である者(夜間において授業を受ける者で昼間を主とする当該事業に従事するもの、昼間において授業を受ける者で夜間を主とする当該事業に従事するもの、同法第百二十四条又は同項の学校の生徒で常時修学しないものその他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)
二 他に職業を有する者(その職業に従事する時間が短い者その他当該事業に専ら従事することが妨げられないと認められる者を除く。)
三 老衰その他心身の障害により事業に従事する能力が著しく阻害されている者
上記の条文をごく簡単にまとめれば、以下の通りです。
①1年であれば6か月以上「専ら従事する」(または、従事可能期間の半分以上を「専ら従事する」)ならOK。
②学生や生徒だったり、他に仕事をしていたりすれば「専ら従事する」とはいえない。ただし、昼は学校に行って夜は事業に従事する、他の仕事の時間が短いなどの理由で「専ら従事することが妨げられないと認められる者」は、例外的にOK。
◆簡単には考えるのはNG
A、Bの夫婦の場合、実際にBがAの事業に専ら従事しており、他の仕事がその妨げになっていないなら、青色事業専従者のダブルワークは可能であるといえます。
しかし、簡単に考えてはいけません。
他に仕事を持つ妻に支払った青色専従者給与の可否について争われた裁判では、上記まとめ②の「専ら従事することが妨げられないと認められる者」という例外に当たるかどうかが問題になりました。
そして、この例外に該当するかどうかは他の職業に従事する期間が短く、その事業に専ら従事することが妨げられないことが一見して明らかであるかどうか、実質的にその事業に専ら従事することが妨げられないと認められるかどうかによって判断するのが相当という考えが示されました。
この裁判では、妻の本業の就業時間を裏付ける資料はなく、供述だけでした。
また、本業の給与よりも他の業務の報酬の方が高額でした。
裁判所は、本業とそれ以外の仕事について、業務の性質、内容、従事の態様その他の事情を検討し、「専ら従事することが妨げられないと認められる者には該当しない」としたため、妻への青色専従者給与は認められませんでした。
◆「本業を妨げてはいない」という客観的証拠
以上のようなことを考慮すれば、青色事業専従者がダブルワークをする場合、他の仕事が「本業に専ら従事することを妨げてはいない」という客観的証拠を残しておくべきでしょう。
具体的にはタイムカードや業務日報などで業務時間や業務内容を明確にしておくことです。
さらには、本業と他の仕事の業務時間や報酬のバランスなども不自然にならないように気を付ける必要があります。
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Posted by 北野純一税理士事務所 at 12:20│Comments(0)
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