2024年04月11日

5棟10室基準」とは


「5棟10室基準」は、不動産所得の確定申告でよく耳にする言葉です。賃貸物件が建物の場合、その不動産事業が「事業的規模であるかどうか」を形式的に判定する基準として使われています。
一戸建てなら5棟、またはアパート・マンションなら10室。この基準以上の貸付であるなら、その不動産賃貸業は「事業的規模」であるいうわけです。なお、一戸建てとアパートの両方ある場合、一戸建て1棟をアパート2室として、合計10室あれば事業的規模と考えます。事業に至らない場合は「事業以外の業務」といいます。
事業的規模になると、資産損失、貸倒損失、専従者給与の必要経費算入、青色申告控除などが認められるので、事業的規模か業務的規模かの判定は重要です。

所得税基本通達26-9
さて、この「5棟10室基準」の根拠は、所得税基本通達26-9です。


建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定
26-9 建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。
(1)貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
(2)独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること


「原則はその貸付けが社会通念上事業といえる程度の規模かどうか(実質基準)で判定すべきだが、事実として5棟または10室以上(形式基準)の貸付けであれば事業的規模として扱う」という内容であり、形式基準が先ではないことが分かります。
この文章の作りからは、「形式基準を満たしていれば、事業的規模である」といえますが、「形式基準を満たしていないから、事業的規模にはならない」とまではいえません。
実質基準である「社会通念上事業と称するに至る程度の規模」の内容が分かりにくいことに加え、形式基準にも「おおむね」が付いています。納税者と税務当局との見解が違うことになっても、そう不思議ではないように思います。

国税不服審判所の裁決事例
実際、納税者と税務当局との間で事業的規模かどうかの争いになり、国税不服審判所で裁決が出た事例をみてみましょう。実質的にどのように判断されたかを確認することができます。
このケースの賃貸物件は、形式基準未満(3階建て1棟)であり、年間賃貸料収入は約950万円でした。


平19.12.4裁決(裁決事例集No.74 37頁)
〇事業とは、自己の計算と危険において営利を目的として対価を得て継続的に行う経済活動のことである。
〇不動産貸付けが不動産所得を生ずべき事業に該当するか否かは、①営利性・有償性の有無、②継続性・反復性の有無、③自己の危険と計算における事業遂行性の有無、④取引に費やした精神的・肉体的労力の程度、⑤人的・物的設備の有無、⑥取引の目的、⑦事業を営む者の職歴・社会的地位・生活状況などの諸点を総合して、社会通念上事業といい得るか否かによって判断するのが相当と解される。


審判所では上記の諸点について検討を行い、①②⑤については事業性を認めたものの、③④については希薄であるとし、①~⑦を総合的に勘案した結果、「社会通念上事業と称するに至る程度のものとは認められない」と判断しました。下記のリンク先を参照すると詳しくみることができます。

形式基準の今後
裁決文のなかには「事業であるか否かの基準は必ずしも明確ではなく、その事業概念は、最終的には社会通念に従ってこれを判断するほかはないというべきである」と書かれています。納税者が判断するのが難しいのも当然であり、ある程度は形式基準に頼らざるを得ないのが実態でしょう。
なお、税務大学校の研究活動では、所得税基本通達26-9について、昭和45年7月の制定時から見直しが行われていないこと、その基準の根拠も明確ではないこと、現時点においては課税上問題と考えられるケースがあることなどから、この通達を再考する必要性に言及する論考が紹介されています。

LINK
国税不服審判所 平19.12.4裁決 裁決事例集No.74 37頁

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Posted by 北野純一税理士事務所 at 11:38Comments(0)経済

2024年03月21日

税務署長の処分に納得できない! そんなときは…


再調査の請求・審査請求・訴訟
税務調査で追徴と言われたけど、どうしても納得できない。そんなときは、その処分の取消しや変更を求める「不服申立て」を行うことができます。不服申立ては行政上の救済制度であり、税務署長に対して行う「再調査の請求」と、国税不服審判所長に対する「審査請求」があります。
また、司法上の救済制度として、裁判所に対して訴訟を提起し処分の是正を求めることもできます。ただし、税務行政では「不服申立前置主義」が取られているため、国税不服審判所長に対する審査請求の裁決を経たあとで、訴訟を起こすことになります。

1.再調査の請求
税務署長が行った更正などの課税処分や差押えなどの滞納処分に不服があるときは、処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内に、税務署長に対して再調査の請求を行うことができます。
税務署長は、その処分が正しかったかどうか、改めて見直しを行い、その結果を「再調査決定書」により納税者に通知します。この再調査の請求に係る決定により、納税者に不利益となるような変更がされることはありません。
なお、納税者の選択により、直接国税不服審判所長に対して審査請求を行うこともできます。

◆令和4年度の再調査の請求
再調査の請求の発生件数は1,533件で、前年度より37.0%増加しました。また、処理件数は1,371件でした。そのうち、何らかの形で納税者の主張が受け入れられた件数(認容件数)は63件(4.6%)でした。なお、再調査の請求については標準審理期間を3か月と定めており、3か月以内に処理された件数の割合は99.5%でした。

2.審査請求
税務署長が行った更正などの課税処分や差押えなどの滞納処分に不服があるときは、処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内に、国税不服審判所長に対して審査請求を行うことができます。また、再調査の請求を行った場合であっても、再調査の請求についての決定を経た後の処分になお不服があるときは、再調査決定の通知を受けた日の翌日から1か月以内に審査請求を行うことができます。
国税不服審判所長は、税務署長の処分が正しかったかどうかを調査・審理し、その結果を「裁決書」により納税者と税務署長に通知します。裁決は、税務署長が行った処分よりも納税者に不利益となるような変更がされることはありません。

◆令和4年度の審査請求
審査請求の件数は3,034件で、前年度より22.2%増加しました。また、処理件数は3,159件でした。処理件数のうち、納税者の主張が何らかの形で受け入れられた件数(認容件数)は225件(7.1%)でした。なお、審査請求については標準審理期間を1年と定めており、1年以内の処理件数割合は95.4%でした。

3.訴訟
国税不服審判所長の裁決を受けた後、なお処分に不服があるときは、裁決の通知を受けた日の翌日から6か月以内に裁判所に訴訟を起こすことができます。

◆令和4年度の訴訟
訴訟の発生件数は173件で、前年度より8.5%減少しました。訴訟の終結件数は186件でした。このうち、何らかの形で納税者側が勝訴した件数は10件(5.4%)でした。

参考資料:
国税庁 税務署長の処分に不服があるとき

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Posted by 北野純一税理士事務所 at 14:24Comments(0)税務

2024年02月29日

政治資金と税金について

こんにちは。北野税理士事務所の北野です。
今回は、政治資金と税金についてお伝えします。



政界を大きく揺るがしている自民党の政治資金パーティーをめぐる事件。国会議員が派閥パーティー券の販売ノルマを超えて集めた分を、派閥が議員にキックバックし、派閥側も議員側も政治資金収支報告書に記載していなかった問題です。東京地検特捜部の捜査では、自民党の安倍派、二階派、岸田派が、おととしまでの5年間で合わせて9億7000万円余りのパーティー収入を政治資金収支報告書に記載していなかったことが明らかになっています。
会社でも個人でも何らかの利益を得たら、普通は税金がかかります。「記載しなかったお金」を手に入れた団体や個人に、税金はかからないのでしょうか。
この事件に登場するのは、政治団体と議員個人です。それぞれごとに政治資金と税金との関係をみる必要があります。

1.政治団体と税金
政治団体のうち、法人格を取得した政党と政党の指定する政治資金団体だけが「法人」です。これら以外の政治団体は法人格を持っていないため、「人格なき社団」に該当します。政策研究団体(いわゆる派閥)、資金管理団体(議員が代表となり、その政治資金を取り扱う団体)、国会議員関係政治団体などが「人格なき社団」として扱われます。

◆寄付収入に対する課税
法人税法では、人格なき社団について、収益事業から生じた所得以外の所得については法人税を課さないこととされています。したがって、政治団体が受けた寄附収入について法人税は課税されません。法人格を有する政党等も同様です。
相続税法では、公益を目的とする事業を行う者が受けた贈与財産について、公益を目的とした事業に供することが確実なものについては、贈与税を非課税とする措置がとられています。政治団体が受けた政治活動に関する寄付は、一般的にはこれに該当するという扱いで非課税になっています。
法人格を有する政党等についても、法人は贈与税の納税義務者となっていないため、贈与税は課税されません。

◆事業収入に対する課税
法人格の有無にかかわらず、収益事業による所得があれば法人税が課税されます。例えば、政治団体が、広く社会に向けて対価を得て機関紙等を発行するなどの出版事業を行なっている場合は、法人税も消費税もかかります。

2.政治家個人と税金
政治家個人が政治資金を受けとった場合の税金はどうでしょうか。実は、毎年1月に国税庁が出す「確定申告の手引き―政治資金に係る『雑所得』の計算等の概要-」という文書(以下、「概要」)に、その説明が載っています。令和6年1月の「概要」には、政治資金に係る雑所得の計算について、以下のように書かれています。


政党から受けた政治活動費や、個人、後援団体などの政治団体から受けた政治活動のための物品等による寄附などは「雑所得」の収入金額になりますので、所得金額の計算をする必要があります。 令和5年分の「政治資金に係る『雑所得』」の金額は、年間の「政治資金収入」から「政治活動のために支出した費用」を控除した差額であり、課税対象となります。

式で書けば次の通りです。


【政治資金に係る雑所得(課税対象)= 政治資金収入 - 政治活動のために支出した費用】

つまり、政治資金についても事業所得の計算方法と同じように、収入から支出を差し引いて残った分があれば、それは雑所得であり課税対象になります。

3.政治資金収支報告書の訂正
今年1月から2月にかけて、政治資金収支内訳書の訂正が相次いで行われました。2月8日のNHK WEB「自民 収支報告書訂正の72人 派閥からの寄付約70%が『繰越額』」によれば、2月8日正午までに72人の国会議員がホームページ上で訂正後の収支報告書(おととしまでの3年間分)を公表しています。NHKはその内容を以下のように報道しています。


・派閥側の訂正で新たに判明した議員側への寄付の総額3億7749万円
・議員側の訂正で追加された支出の総額は28%にあたる1億592万円


政治資金収支報告書は、政治団体が作るものです。それを訂正するということは、「記載しなかったお金は政治団体が受け取った」ということを意味しますが、それを鵜呑みにしてもいいのでしょうか。「政治資金収支報告書に記載しなくてもよい」と言われていたお金を、わざわざ政治団体(=収支報告書への記載が必要)に入れるでしょうか。そちらの方が不自然な感じがするのですが…。
もし、政治家個人に渡っていたとしたら、前述のとおり、それは政治家個人の雑所得のもとになる収入です。同額以上の支出がなければ、おそらく納税が必要になるはずです。それをはっきりさせるには、派閥・資金管理団体・政治家個人の口座の動きを追うなどして、お金の流れを解明する必要があります。もちろん、国会議員自身が自主的に「雑所得の申告を漏らしていました」ということで、修正申告し納税すればたいしたものです。

◆1966年 政界の「黒い霧事件」
同事件は、国会議員に対する税務調査まで発展しました。申告漏れなどにより修正申告、更正決定した国会議員は「現職議員が181名、前議員が22名、合計203名で、金額はトータル2億1800万円。当時の衆参両院の定数の3割近くに申告漏れがある計算だった」(東京新聞WEB 2024年2月20日)とのことです。
はたして、今回の事件ではどこまで追求が行われるでしょうか。

参考資料:
「令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告について ―政治資金に係る「雑所得」の計算等の概要―」

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Posted by 北野純一税理士事務所 at 14:42Comments(0)その他

2024年02月13日

安心してください。電子帳簿保存法は猶予措置があります


北野税理士事務所の北野です。

対応完了は3割にとどまる
昨年12月の帝国データバンクのアンケート結果によれば、電子帳簿保存法への対応が完了した企業は3割弱(!)とのこと。それも企業規模が小さいほど対応に遅れがみられるなど、まだまだ対応ができていない事業者が多いのです。

データの保存方法が面倒
電子帳簿保存法への対応を困難にしている理由の一つに、「電子取引データの保存方法」があります。同法によれば、保存したデータについて、①改ざん防止の措置をとる、②「日付・金額・取引先」で検索できるようにする必要があります。

①改ざん防止の措置をとる
データにタイムスタンプを付与する、訂正・削除の履歴が残るシステム等を利用して授受・保存をするなどの方法があります。また、専用のシステム等の費⽤をかけずに「改ざん防止のための事務処理規程を定めて守る」という方法もあります。

②「日付・金額・取引先」で検索できる
こちらも専⽤のシステム等の導入で対応する方法があります。それ以外にも、表計算ソフト等で索引簿を作成する方法や、データのファイル名に「日付・金額・取引先」を付けることで、検索機能が利用できるようにする方法があります。

電子帳簿保存法に対応したシステム等を導入すれば、一定の費用がかかりますが、手間はかかりません。費用をかけずに対応しようとすれば、手間をかけるしかありません。「どっちにしても困る!」と思っている間に1月1日が来てしまった、というのが対応できていない事業者の本音でしょう。

改正により、厳しい要件が大幅に緩和
さて、令和5年度税制改正では、令和6年1月からの電子取引データ保存についても改正が行われています。ここまで述べたような状況を予測したうえでの改正であり、①検索機能のすべてを不要とする措置の対象者の見直し、②新たな猶予措置の整備がされています。

①検索機能のすべてを不要とする措置の対象者の見直し

イ.検索機能が不要とされる対象者の範囲が、基準期間(2課税年度前)の売上高が「1,000万円以下」の保存義務者から「5,000万円以下」の保存義務者に拡大されました。


ロ.対象者に「電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている保存義務者」が追加されました。


つまり、基準期間の売上高が5000万円以下なら、データの検索機能がなくてもかまいません。また、電子取引データをプリントアウトした書面を、整然とした状態で提示・提出することができる場合も同様です。

②新たな猶予措置の整備(改ざん防止も検索機能も不要)
次のイ・ロの要件をいずれも満たしている場合には、データの改ざん防⽌や検索機能などは不要となり、電子取引データを単に保存しておくだけでよいとされました。


イ.保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署⻑が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)


ロ.税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合

「相当の理由」とは
ところで、②のイにある「相当の理由」とはなんでしょうか。

国税庁は「電子帳簿保存法一問一答(令和5年6月)」問61の回答として、次のように書いています。


令和5年度の税制改正において創設された新たな猶予措置の「相当の理由」とは、例えば、 その電磁的記録そのものの保存は可能であるものの、保存時に満たすべき要件に従って保存するためのシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、要件に従って電磁的記録の保存を行うための環境が整っていない事情がある場合については、この猶予措置における「相当の理由」があると認められ、保存時に満たすべき要件に従って保存できる環境が整うまでは、そうした保存時に満たすべき要件が不要となります。


したがって、経済的な余裕がなく電帳法対応ソフトを導入できていないとか、人手不足で電帳法対応にあたる従業員が確保できないなども「相当の理由」にあたると考えられています。

電子帳簿保存法への対応ができていない事業者のみなさん。とりあえず、電子取引データの保存だけはしておきましょう。改ざん防止や検索機能については、それができるよう目指しつつ…。

参考資料:
国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました(令和5年4月)」
国税庁「電子帳簿保存法一問一答(令和5年6月)」


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Posted by 北野純一税理士事務所 at 13:46Comments(0)電子帳簿保存法

2024年01月25日

電子取引データを紙に印刷して保存するのは違反…じゃありません




電子帳簿保存法関連のテレビCMをよく視ます。
とりわけインパクトの強いR社のCMでは、こんなセリフが展開されます。


「おっと〇〇!?
取引先から電子発行された請求書を印刷!? ファイルに保存したぞ!?
イエローカード!
電子発行された請求書を紙で保存することは電子帳簿保存法に違反しています!」

さて、この表現を言葉通りに受け取っていいのでしょうか。視聴者がミスリードするのではないかと、筆者はずっと引っ掛かりを感じています。

1.「紙で保存してはならない」という条文はない
結論から言えば、同法にそのような趣旨の条文はありません。電子データの保存について定めているのは第7条です。


電子取引(※)の取引情報に係る電磁的記録の保存
第七条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。

※「電子取引」とは、取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項)の授受を電磁的方式により行う取引をいい、EDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む)、インターネット上にサイトを設け、そのサイトを通じて取引情報を授受する取引等です。

2.重要なのは電子取引データの保存
第7条では「電子取引を行った場合は、そのデータ(電磁的記録)を保存しなければならない」と決めています。この場合、何が違反になるのでしょうか。それは「電子取引データを保存しない」ことです。「紙に印刷して保存する」ことは違反ではありません。
電子帳簿保存法では「電子取引のデータを保存すること」が重要なのであり、紙での保存が良いとかダメとか言っているわけではありません。にもかかわらず、「紙で保存することは違反です」と表現するのはおかしな話であり、筆者がミスリードを心配する理由もそこにあります。

国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」では、令和6年からの電子取引のデータ保存について以下のような記述をしています。「データを保存せよ」が主眼であり、紙の保存がダメというものではないことがわかります。


個人事業者・法人の皆さまへ

請求書・領収書・契約書・見積書などの関する電子データを送付受領した場合には、その電子データを一定の要件を満たした形で保存することが必要です。 令和5年12月31までに行う電子取引については、保存すべき電子データをプリントアウトして保存し、税務調査の際に」提示・提出できるようにしていれば差し支えありません(事前申請等は不要)が、令和6年からは保存要件に従って電子データの保存が行えるよう、必要な準備をお願いします。

参考:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」電子取引関係

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Posted by 北野純一税理士事務所 at 15:14Comments(0)電子帳簿保存法

2024年01月18日

『相続税の申告は、10ヶ月以内!』研修会を開催しました

北野純一税理士事務所の北野です。




1月16日(火)に国分寺にある某介護施設で施設の利用の親族様向けに相続税の申告についての研修会を開催しました。


相続税の具体的な解説や申告、納付期限等をイラストを入れつつわかりやすく説明いたしました。当事務所の相続相談会を担当している坂田税理士にも同席してもらい、専門性が高い研修になりました。


参加者の皆様からは「相続についてほとんど知らない者にとっては、分かりやすかったです。」「かみ砕いてのお話がわかりやすかったです」とご好評いただきました。

セミナーの内容
1.相続税の申告期限はいつまでか

2.相続税がかかるかどうかを調べる

3.守らないといけない期限

4. 相続人の確定・相続財産の確定をする

5.相続税の計算

6.質疑応答



主催:北野税理士事務所 税理士 北野純一

開催日:2024年1月16日(水)

講師:北野純一税理士事務所

代表 税理士 北野 純一

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Posted by 北野純一税理士事務所 at 11:44Comments(0)セミナー

2024年01月11日

災害と所得税

北野純一税理士事務所の北野です。

この度の令和6年1月1日に発生しました「令和6年能登半島地震」により被害に遭われた皆様には心よりお見舞いを申し上げます。
皆様の安全と被災地の一日も早い復興そして被災された皆様の生活が1日も早く平穏に復することをお祈り申し上げます。


今回は、災害に遭ってしまった時に所得税を軽減できる方法をお伝えしたいと思います。


災害と所得税


地震、火災、風水害などの災害によって、住宅や家財などに損害を受けたときは、確定申告で

(1)「所得税法」による雑損控除の方法
(2)「災害減免法」による所得税の軽減免除による方法


のどちらか有利な方法を選ぶことにより、所得税の全部又は一部を軽減することができます。



1.雑損控除

災害によって、住宅や家財を含む生活に通常必要な資産(※1)について損害を受けた場合には、雑損控除を受けて課税所得を減額することができます。

その年の所得金額から控除しきれない金額がある場合には、翌年以後3年間(※2)に繰り越して、各年分の所得金額から控除することができます。


雑損控除の金額は、以下の①と②のうちいずれか多い方の金額です。







(※1)

棚卸資産や事業用の固定資産、山林、生活に通常必要でない資産は、雑損控除の対象にはなりません。なお、生活に通常必要でない資産とは、別荘や競走馬、1個又は1組の価額が30万円を超える貴金属、書画、骨とうなどです。対象となる資産は、納税者自身、または納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族(その年の総所得金額等が48万円以下の人)が所有する資産です。

(※2)

特定非常災害として指定された災害により、住宅や家財などについて生じた損失について、その年分の所得金額から控除しきれない金額がある場合には、翌年以後5年間になります。

(※3)

「損害金額」とは、損害を受けた時の直前におけるその資産の時価を基にして計算した損害の額です。その資産が減価償却資産である場合には、取得価額から非業務用資産として計算した減価償却費累積額相当額を控除した金額を基礎として損害金額を計算することもできます。

(※4)

「災害関連支出の金額」とは、災害により滅失した住宅、家財などを取壊しまたは除去するために支出した金額です。

(※5)

「保険金等の額」とは、災害などに関して受け取った保険金や損害賠償金などの金額です。保険金等の額は、まず、損害金額から差し引き、保険金等の額が損害金額を超える場合には、災害関連支出の金額から差し引きます。


2.災害減免法



災害によって受けた住宅や家財の損害金額(保険金などにより補てんされる金額を除く)がその時価の2分の1以上で、かつ、災害にあった年の所得金額の合計額が1,000万円以下のときにおいて、その災害による損失額について雑損控除の適用を受けない場合は、災害減免法によりその年の所得税が次のように軽減または免除されます。

なお、減免を受けた年の翌年分以降は、減免は受けられません。

災害と所得税②



参考:国税庁「災害等にあったとき」


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Posted by 北野純一税理士事務所 at 15:08Comments(0)確定申告

2023年12月26日

ふるさと納税 利用者過去最高に

北野税理士事務所の北野です。

ふるさと納税


いよいよ年の瀬が迫りました。この時期、駆け込みでふるさと納税をした人も多いはず。総務省によれば、2022年度のふるさと納税寄附額は約9,654億円、納税寄附件数は約5,184万件、利用者数も約891万人と過去最高を更新しています。今回は、ふるさと納税に焦点をあてます。



自治体に寄付をして減税を受ける

ふるさと納税は2008年から始まった制度です。居住地ではない自治体に一定額を寄付すると、その年の所得税と翌年の住民税の減税が受けられ、さらにその自治体から返礼品をもらうことができます。

つまり、「減税が受けられる寄付金」です。以前は確定申告が必要でしたが、2015年から「ワンストップ特例制度」が始まり、サラリーマンは寄付先の自治体に所定の申請書を出せば手続きが完了し、使い勝手がよくなりました。ワンストップを利用した場合、所得税の減税分も加えた金額が、住民税から減税されます。



2,000円の負担で、それ以上の返礼品

人気が出た一番の理由は、寄付金が一定額までならば、「実負担額2,000円(=寄付金マイナス減税額)で、それ以上の価値の返礼品がもらえる」ことでしょう。

ただし、そもそもは「今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた『ふるさと』に、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのではないか」という問題提起から始まった制度です。総務省は、ふるさと納税には「三つの大きな意義」があるとして、以下のように説明しています。



①納税者が寄附先を選択する制度であり、選択するからこそ、その使われ方を考えるきっかけとなる制度である。

②生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度である。

③自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進む。



いかがでしょうか。納税者の意図と政府が掲げる意義の間には、なかなかの隔たりがあることがわかります。



ふるさと納税の困った点

さて、人気のふるさと納税ですが、良いことづくめというわけではありません。過度な返礼品競争が問題になり、総務省が手綱を引き締めたのはご存じの通りです。特産品のある自治体にはたくさんのふるさと納税が集まる一方、そうでない自治体には集まらないばかりか税収が減ってしまうという問題点があります。

ここで、ワンストップ納税を利用したサラリーマンAさんに登場してもらいます。Aさんの住んでいる自治体はX、ふるさと納税をした自治体はYです。Xにはこれといった特産品がありません。Aさんは、ちょうど2,000円の負担で済むよう計算し、Yに50,000円のふるさと納税をしました。

総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和5年度)」、読売新聞「ふるさと納税…結局誰が得をして、誰が損をしているのか」(2022.2.18)を参考に、50,000円がどう配分されるかを考えてみます。



Aさん…Xから48,000円の住民税減税を受け、実負担は2,000円。

自治体X…48,000円の税収減。

自治体Y…50,000円の寄付を受ける。返礼品の販売業者に13,900円(27.8%)、それ以外に諸費用(送付・広報・決済・事務)として9,500円(19.0%)を支出。実収益は26,600円(53.2%)。



(注)カッコ内のパーセンテージは、総務省の資料「ふるさと納税の募集に要した費用(全団体合計額)」による。ふるさと納税サイトへの支払いは諸費用に含まれる。



矛盾を抱える制度

自治体Xが大都市で、もともと財政が豊かならばまだしも、規模の小さな自治体で特産品がない場合は、X自身が受ける寄付金はそれほど多くありません。ふるさと納税を利用する住民が増えるほど税収減となり、結果として住民サービスの低下につながりかねません。単純計算で人口比7.4%の利用率なので、それなりの税収減となることもあり得ます。総務省の意義③に「自治体間の競争」とありますが、土台となる条件が自治体ごとに違っており、そもそも競争として成り立たないのではないでしょうか。良かれと思ってすることが、実は自分の首を絞めることにつながるのでは困ります。

一方で自治体Yにとっては寄付された金額の半分近くに減るとはいえ、財政難を支える確かな収入源となっており、非常に助かっているという声が出されています。ふるさと納税は、引き続き矛盾を抱えた制度であり、そもそもの趣旨や自治体財政への影響の検証も含め、さらなる制度変更が必要ではないでしょうか。



参考:総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和5年度)


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Posted by 北野純一税理士事務所 at 13:39Comments(0)寄付金

2023年12月11日

2024年1月1日から相続税・贈与税が変わる

北野税理士事務所の北野です。

相続税法及び租税特別措置法の令和5年度改正により、来年1月1日から、暦年課税や相続時精算課税の制度が変わります。
重要ポイントについて、最終確認をしておきましょう。

来年1月1日から相続税・贈与税が変わる


1.暦年課税…生前贈与加算の対象期間が7年に

「暦年課税」とは、1月1日から12月31日までの一年間に贈与された財産の合計額に応じて10~55%の税率で贈与税が課税される計算方法のことです。
年110万円の基礎控除があるため、それ以下の贈与額であれば贈与税はかからず、税務署への申告も不要です。
「生前贈与加算」とは、被相続人(亡くなった人)から生前に贈与を受けた財産がある場合、その財産を死亡時の財産に加算し、相続税の課税対象にする制度です。基礎控除額以下で贈与税がかからなかった財産も加算の対象です。

改正前は死亡前3年間の贈与財産が対象でしたが、改正によりその期間が7年間に延長されました。とはいえ、いきなり7年になるわけではありません。2024年1月1日以後の贈与について、下記のように加算対象期間が長くなっていき、最終的に7年になります。

1

なお、死亡前3年間の贈与財産については全額を加算しますが、今回延長された4~7年分については、その間の贈与財産の合計額から100万円を差し引いた残額を加算します。


2.相続時精算課税

「相続時精算課税制度」とは、一定の要件に該当する贈与者と受贈者間で財産の贈与を行った場合に選択できる贈与税の計算方法のことです。
この制度を選択すると、贈与財産の累計が2500万円(特別控除)までは贈与税がかかりません。
累計が2500万円を超えると、超えた部分に対して一律20%の贈与税がかかります。
その後相続が発生したときは、それまでの相続時精算課税の贈与財産と死亡時の相続財産を合算し、相続税の計算を行います。すでに支払った贈与税がある場合には、その贈与税を差し引いて残りの相続税を納めます。
なお、ある贈与者について一度相続時精算課税を選択すると、その贈与者からの贈与については暦年課税に戻すことはできません。
相続時精算課税は、贈与時の税負担を抑えることができますが、相続時には贈与財産も相続税の対象になるため、「課税の繰り延べ」であるといえます。

3.年110万円の基礎控除の創設

今回の改正により、相続時精算課税を選択した受贈者は、特定贈与者(相続時精算課税の対象である贈与者)ごとに、一年間に贈与された財産の合計額から基礎控除110万円を差し引くことができるようになりました。
相続時精算課税の対象になるのは110万円を差し引いた残りの金額です。以下のような点が変わってきます。

●贈与税

①年110万円以下の贈与なら、贈与税の申告は不要 相続時精算課税を選択すると、改正前はたとえ1万円を贈与した場合でも申告が必要でした。しかし改正後は、110万円以下の贈与なら基礎控除を差し引いて0円になるため、贈与税が課税されず、申告も不要になります。

②贈与税がかからないかたちで、2500万円以上の財産が贈与できる
例えば、特定贈与者からある年に500万円の贈与を受けた場合、改正前は500万円全額が相続時精算課税の対象になりました。改正後は、基礎控除110万円を差し引いた390万円が相続時精算課税の対象になります。その翌年200万円の贈与を受けたとしたら、基礎控除110万円を差し引いた90万円が相続時精算課税の対象になります。
20%課税の基準となる「2500万円」は、年110万円の基礎控除を差し引いた残額の累計で計算するため、実質的に2500万円以上の財産が無税で贈与できるようになります。

●相続税

相続財産に加算する相続時精算課税の贈与財産は、年110万円の基礎控除を差し引いた残額の累計になります。贈与財産が110万円以下だった年については、加算する財産がないことになります。

このようにみてくると、相続時精算課税についてはメリットを増やし、納税者にとって使い勝手がよくなる方向での改正となっています。令和5年度改正により、今後この制度を選択する人が増えていくことが予想されます。

国税庁「令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」



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Posted by 北野純一税理士事務所 at 14:27Comments(0)相続

2023年11月27日

オンラインゲームと消費税

北野税理士事務所の北野です。

今回は、オンラインゲームと消費税の関係についてお話します。

オンラインゲームと消費税



オンラインゲームが人気です。スマホでゲームを楽しむ人の姿は、すっかり日常生活に溶け込んでいます。

『ファミ通ゲーム白書2023』によると、2022年の国内のゲーム市場規模は2兆316億円でした。そのうちの約8割(1兆6568億円)を占めたのが、スマートフォン、タブレットやパソコンなどを利用した「オンラインプラットフォーム」でした。

オンラインゲームはゲーム市場の主流といえます。


1.海外ゲーム事業者への支払い
さて、人気のオンラインゲーム。

ゲームアプリそのものが有料の場合はもちろん、アプリは無料でもゲーム内で課金をすれば、当然お金の支払いが発生します。ゲームアプリの開発業者が国内にいるか国外にいるかは関係なく、その支払いには消費税が課税されます。
「国外の事業者との取引は、そもそも消費税の課税対象外」というのは過去の話。たしかに2015年9月までは、国外の事業者からインターネット等を通じて受けたサービスには消費税が課税されませんでした。

しかし、同年10月からは消費税がかかるようになりました。

2.「国外取引」から「国内取引」へ
同年の税制改正では、インターネット等を介して行われる電子書籍・音楽・広告の配信などの役務の提供を、消費税法上「電気通信利用役務の提供」と位置付けました。

そのうえで、その役務の提供が国内取引に該当するかどうかの内外判定基準を、役務の提供を行う者の事務所等の所在地ではなく、役務の提供を受ける者の住所等としました。

その適用が同年10月1日からだったため、海外発のオンラインゲームを利用者が購入したり、課金したりした場合、9月までは「国外取引として不課税」、10月からは「国内取引として課税」という扱いになったのです。

3.消費税30億円の申告漏れ
ところで、消費税の納税義務は事業者が負っています。

消費税をもらった海外ゲーム事業者は、日本に消費税を納めているのでしょうか。

残念ながらそう上手くはいきません。

つい先日も、人気オンラインゲームを配信するルクセンブルクの会社が、東京国税局から3年間で消費税約30億円の申告漏れを指摘されていた、とのニュースが報道されました。

このゲームは無料で遊べますが、アイテムを購入するためには課金が必要で、その課金の一部である約300億円の売上を申告から漏らしていたとのことです。

4.大手プラットフォーム企業に代行納税を
このケースは幸いにも明らかになりましたが、国内に拠店がない海外ゲーム事業者も多く、その場合は国税当局も実態の把握や徴収が難しいというのが現実です。

つまり、利用者が消費税を支払っても、国に届かず事業者のふところに入ったままになっているのです。
日本政府はこの事態を重くみており、利用者と海外ゲーム事業者のやり取りを介在するグーグルやアップルなどの大手プラットフォーム企業に、消費税の代行納税をさせる制度を検討しています。



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Posted by 北野純一税理士事務所 at 10:24Comments(0)税務